Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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優勝への道のり

3種類のスライダー

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マウンド上には新外国人ドウェイン・ルーガーが仁王立ちしている。


197cm、97kgという堂々たる体格。広い肩幅に分厚い胸板。比嘉もかなりビルドアップしているが、ルーガーの方が体格が大きい分、パワフルに感じる。


右腕にはタトゥーが施されている。

その右腕から放つスライダーの切れ味は鋭い。


トップバッターの筧が打席に入る。


「プレイ!」


膝を高々と胸まで上げるモーションで第一球を投げた。


ゴォォと唸りを上げてきそうなストレートが高目に。


ズバーン!と大きい音をたててミットに入った。


「ボール」


少し高かったせいか、判定はボール。



スコアボードには154kmと表示された。



「こりゃスゲー球投げるなぁ、あの外人!」


「速い事は速いんですが、速さよりも球質が重そうですね」


マウンドでせっかちそうな仕草をして二球目を投げた。


今度は緩い変化球。


これも外れてボール。


「あんまり良くないな、コントロールは」


「制球力というより、力で押すタイプなんでしょうね」


三球目は先程より少し速い変化球がインコースへ。


「ストライク!」


カウントはツーボール、ワンストライク。


ルーガーはマウンド上で忙しなく動いている。


「何だ、随分とせっかちだな」


「あれで気持ちを整えてるかもしれませんよ」


そうなのか。

四球目はアウトコースへツーシームが。


筧は振りにいった。


ガシッとバットの先端に当たり、打球は左に切れた。


「ファール!」


「痛ってぇ!」


筧は手をブラブラさせた。

今のファールで手に響いたのだろう。


五球目を投げた。

今度は速い変化球。

しかもインコースへ。


「…っ!」


「ストライクアウト!」


筧がタイミング良くバットを合わせたが、ボールはグン、と鋭く曲がった。


ルーガー得意のスライダーで三振。


「その前の変化球もスライダーなのでは」


「あの緩いカーブみたいな球もか?」


「ええ、軌道はほぼ同じですし速いか遅いかの違いだけで」


櫻井の言うようにスライダーにアクセントを付けているのだろうか。


そして2番唐澤がバッターボックスに入った。


(スライダーが物凄く曲がった…よっぽどスライダーに自信をもってるんだろうな)


ならば、それを打つのみ!とバットを構えた。


ルーガーの初球は真ん中低目の変化球。

唐澤はバットを出すが、ボールは鋭く落ちた。


「ストライク!」



「何だ、今のは」


「縦のスライダーでしょう」

ルーガーはスライダーのバリエーションが豊富みたいだ。



相変わらずマウンド上では忙しなく動いている。



二球目を投げた。


ツーシームがアウトコースへ。

これは平然と見送る。


「ボール!」


キャッチャーに早くよこせ、とジェスチャーしている。



「何つー、せっかちなヤツだ」


「そんなに早く投げたいんですかね」


あまりにもせっかち過ぎて、傍から見たら動きがコミカルで面白い。


膝を高々を上げ、三球目を投げた。


速い球だ。


唐澤はバットを出そうとしたが途中で止めた。


「ボール!」


真ん中やや高目からインコース低目へ鋭く曲がった。


「あれもスライダーか?」


「そうでしょうね。彼は3種類のスライダーを操るみたいですよ」



ルーガーは縦横斜めのスライダーを駆使する。

それに加え、スピードの調整も出来るのでスライダーだけでもかなりの種類になる。

速いスライダー、普通のスライダー、遅いスライダーというように。


「このスライダーを武器にメジャーで二桁勝利を挙げてたワケか」


「手強いですね」



四球目、今度は高目へストレート。


(もらった)


唐澤は鋭くバットを振り抜いた。


(グッ…押されてる…)


スイングが球の威力に押され、レフト方向へフラフラと上がった。


レフト知念が定位置でキャッチ。


これでツーアウト。



「力負けしたね、唐澤くん」


「結城さん…あのピッチャーの球、スゲー重いっすよ」


痺れたのだろうか、手をブラブラしている。


「忠告ありがとう。重い球か…これは強敵だな」


フフっと口元に笑みを浮かべ打席に入った。



昨日は取り乱してしまい、途中交代した結城。


今日は何事もなく無事に試合を終えるのだろうか。
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