Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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優勝するためには

再びキレる

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空気の読めないヤツ…

まさか、そんなヤツがピッチャーだったとは。


「あの…何で怒られるのか分かんないんですけど、とりあえずすいません」

三度帽子を取って頭を下げた。


「テメー、わざとやってんのか!」


唐澤はマウンドに向かおうとするが、それを結城が制した。


「落ち着け、唐澤くん!」


「結城さん、見たでしょ!アイツ、ナメてんすよオレの事!」


「よく見るんだ、彼は決してナメてるワケじゃない」


マウンドでは猪木が唐澤にビビってたじろいでいる。


「だからと言って、何度もタイムかけてあんな事されたら、誰だってイラッとしますよ!」


「いいから落ち着くんだ!」


結城は懸命に落ち着かせようとするが、唐澤は一向に収まりがつかない様子だ。


マウンド上ではマシンガンズの内野陣が集まり、猪木を囲うようにガードした。


「猪木!お前、トイレ行くならもっと前に行っとけ!」


「2度もタイムかけやがって、ケガかと思ったじゃねえか!」


「お前は緊張感無さ過ぎだぞ!」


猪木はナインに責められた。


「えっ…だってトイレ行きたかったし、それにさっきは無性に喉が乾いたから」


「だから、そんなもんは終わってからするもんなんだよ!」


「お前、ホントに空気読めないなぁ」


やっぱり、空気の読めないヤツだった。



「はぁ…以後気をつけます」


猪木自身は何で怒られているのか、皆目見当がつかない。

空気が読めないというか、あまりにもマイペース過ぎる性格故に何かしらトラブルに巻き込まれる。



一方バッターボックスでは、唐澤がいまだにカッカしてる。


「これが落ち着けと言われて、落ち着くワケないでしょ!」


唐澤も案外しつこい。


「唐澤くん!相手はああやって反省してるんだ、ここは見逃してやろう!」


それにしても、二人は兄弟かと見間違える程似ている。

唐澤と結城は身長も体重もほぼ同じ。

体型も差ほど変わらず。

おまけにユニフォームの着こなしも膝上までソックスを上げるオールドスタイル。

顔立ちも中性的で美少年という表現がピッタリだ。


強いて挙げるならば、唐澤の方が結城に比べると少し目がつり上がっている。


その兄弟みたいな二人がずっと揉めている。


「…おい、いい加減にしろよ」

結城の声のトーンが変わった。


「あ…ヤバい、チサトさんキレたかも」


中山が素早くベンチから飛び出した。


「チサトさん!この辺で勘弁してやって下さい!」


必死で結城をなだめた。


「おい、トーマ!お前も謝れ、ほら!チサトさん、ホントすいません!」


「カズト…オメーは引っ込んでろ!」


結城は鬼の形相で中山を突き飛ばした。


「あぁ~、ダメだこりゃ…おおーい、皆来てくれ!チサトさん抑えてくれよ~っ!」


一人じゃとても押さえきれない為、助けを求めた。


「結城さん、落ち着いて!」


「結城さん、戻りましょう!」


「おい、トーマ!お前も押さえろ!」

いつの間にか、唐澤までもが結城を必死でなだめている。


「結城さん、自分が悪かったです!ですから、落ち着いてください!」


もう、メチャクチャだ。


「ハッハッハッハ!こりゃあおもしれーな!結城がキレたら、誰も手がつけられないとは」


「笑い事じゃないですよ、監督!」


しまいには、トーマスまでもが結城を止めに入った。


「Hey,Yuki!Calm down!(おい、結城!落ち着け!)」


トーマスの怪力で何とか結城を押さえつけた。


「…まただ…ボクとした事が、また怒りで我を忘れてしまうとは…」

正気にかえった結城は酷く落ち込んだ。



こんな調子で試合が再開したが、唐澤も結城も心ここに在らずで、呆気なく凡退して1回の裏は無得点で終了した。
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