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開幕
配球が読まれる
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中邑は2番稲葉をフォークでショートゴロに打ち取り、これでツーアウト。
【3番センター浅倉。背番号8】
昨日はノーヒットに終わった浅倉が左打席に入る。
「打たなきゃヤバいな…」
ボソッと呟き、バットを垂直に持ち中邑の方へ向ける。
「ここから反撃だ」
三塁側ベンチでは翔田が自信満々の表情を浮かべる。
(今日は球が走ってる…相手が誰だろうが、ノーヒットに抑えてやる!)
手にしたロジンバッグを足元に落とし、七海のサインを見る。
(初球はこれだ)
(OK、オレもそう思ってたところだ)
ノーワインドアップからのキレイなオーバースローで初球を投げた。
スピードの乗ったツーシームがアウトコース低めへ。
(読み通りだ!)
浅倉は右足を踏み込み、狙い済ましたように振り抜く。
「マジか…」
七海が声を上げたと同時に打球音が鳴り響く。
打球はレフトへ弧を描いて飛んでいく。
レフト庵野が懸命にバッグするが、打球はスタンドに吸い込まれた。
「アレを打つのかよ…」
打たれた中邑はガックリと肩を落とす。
浅倉が移籍後初アーチでキングダムが先制点を挙げた。
「まるで今のコースを読んでいたかのようなスイングだな」
櫻井はサインを読まれているのではないかと感じた。
浅倉はゆっくりとベースを回ってホームイン。
「タ、タイム」
七海がタイムをとり、マウンドに駆け寄る。
「七海さん、あの球をレフトスタンドに運ぶとは…もしかして、サインが読まれてるんじゃ…」
「い、いや…そんな事は無いだろう!相手は浅倉だし、偶然読みが当たっただけだ!今日は球が走ってるんだし、次で断ち切ろう!」
「は、はぁ…」
先程までの勢いはどこへやら、途端に弱気になってしまった。
【4番ファースト ロドリゲス。背番号44】
浅倉同様、昨日はノーヒットに終わったロドリゲスだが、キングダムで最も警戒しなければならないバッターだ。
巨体を揺すらし、ノッシノッシと歩を進め右打席に入る。
一見強面の顔だが、陽気なドミニカンでチームでも1,2を争う人気者だ。
来日6年目でコンスタントに3割30本をマークする右の大砲だが、実は三振の少ないバッターとしても有名。
「フフっ、さっきの一発で意気消沈か…エースナンバーを付けてるクセに、ノミの心臓だな」
翔田がその様子を見て不敵に笑う。
浅倉に一発を打たれた直後とあって、心中は穏やかではない。
「ヨシヒコ、さっきのホームランは忘れろ!気持ちを切り替えて、ロドリゲスを打ち取る事に集中するんだ!」
「…七海さん、今度はオレがサインを出します」
「エッ?」
「万が一という事もあるし、ここはオレがサインを出しますよ」
「オレのサインが信用出来ないっていうのかよ?」
七海の表情が変わる。
「そうは言ってないですが、念の為ですよ」
「そう言ってるようなモンだろうが!」
「違いますって!ただ、ちょっと引っ掛かるところがあるんで、試しにオレがサインを出して様子を見たいんです」
「考えすぎだろ、サインなんか読まれるワケが無いだろう」
「…分かりましたよ、じゃあリードお願いします」
納得がいかないが、七海を怒らせても仕方ないので七海に従った。
「プレイ!」
ロドリゲスはバッターボックスで巨体を小刻みに揺らしながらリズムをとっている。
(さっきのはマグレだ…初球はこれでいこう)
七海がサインを出す。
(攻め方は間違ってないんだが…何か引っ掛かるんだよな)
渋々サインに頷き、初球を投げた。
インコース真ん中からボールになるフォークだ。
ロドリゲスは早々と構えを解いて見送る。
「ボール!」
「今の見送り方は…」
間違いない、サインは読まれている。
「タイム!」
今度は中邑がタイムをとった。
再び七海がマウンドに向かう。
「何だよ、今度は?」
「今の見ました?投げた瞬間、バットを下ろして見送ったんですよ!」
「お前さぁ、いちいち気にし過ぎなんだよ!相手はロドリゲスなんだぞ!ボール球に手を出さない事ぐらい、お前も分かってるだろ!」
「そうですけど、見送り方があまりにも不自然なんですよ!アレじゃ、球種は分かってるって言ってる様な見送り方ですよ」
「…うるせぇな、ったく…じゃあ、次からはお前がサインを出せ!」
憮然とした表情で吐き捨てると、さっさとマウンドを下りて守備についた。
(七海さんのリードは読まれている…今度はオレがリードして抑えるしかない)
中邑がサインを出した。
ゆったりとしたモーションから2球目を投げた。
真ん中から外へ外れるスライダー、見送ればボールになるが際どいコースだ。
「…haッ!」
ロドリゲスは長いリーチを生かしたスイングでボールを捕らえた。
「何っ!」
これまたジャストミート。
今度はライトへグーンと伸びる。
ライト唐澤が俊足を飛ばして懸命にバックする。
フェンス手前まで追いつき、ジャンプして腕を伸ばした。
「あっ…」
ボールはグラブをかすめ、スタンド最前列に飛び込んだ。
「ウソだ…あのコースを読んでいたというのか…」
浅倉に続き、ロドリゲスの連続ホームランで更に1点追加。
七海が再びタイムをかけてマウンドに向かった。
「おい、打たれたじゃねぇかよ!オレよりもお前のサインが読まれてるんじゃないのか!」
「イヤ、そんなハズは…」
中邑も困惑するばかりだ。
「どちらがサインを出しても、滅多打ちに遭うんだから、気が済むまで揉めればいい…フフフ」
翔田は中邑の配球を読んでいた。
中邑は左の強打者に対してツーシーム、右の強打者にはスライダーと第1打席の初球に投げる。
つまり、それさえ分かれば狙い打ちしただけでオーバーフェンスとなる。
翔田はスコアラーに中邑のピッチングを録るよう命じた。
そこで分かったのは、中邑が初球に投げる球種とコースが2パターンあるという事。
「次の打席では使えないが、中途半端な攻略法だけにバレる事無く打ち崩す事が出来る」
この攻略法が発揮出来るのは第1打席のみ。
だが、初回に点を獲っておけば、試合は有利に進められる。
「パッと見て分かりそうな事だが、案外分かりにくいもんなんだよな」
この試合、2点あれば後は逃げ切る作戦をとるのみ。
翔田の思惑通りに試合は進む。
【3番センター浅倉。背番号8】
昨日はノーヒットに終わった浅倉が左打席に入る。
「打たなきゃヤバいな…」
ボソッと呟き、バットを垂直に持ち中邑の方へ向ける。
「ここから反撃だ」
三塁側ベンチでは翔田が自信満々の表情を浮かべる。
(今日は球が走ってる…相手が誰だろうが、ノーヒットに抑えてやる!)
手にしたロジンバッグを足元に落とし、七海のサインを見る。
(初球はこれだ)
(OK、オレもそう思ってたところだ)
ノーワインドアップからのキレイなオーバースローで初球を投げた。
スピードの乗ったツーシームがアウトコース低めへ。
(読み通りだ!)
浅倉は右足を踏み込み、狙い済ましたように振り抜く。
「マジか…」
七海が声を上げたと同時に打球音が鳴り響く。
打球はレフトへ弧を描いて飛んでいく。
レフト庵野が懸命にバッグするが、打球はスタンドに吸い込まれた。
「アレを打つのかよ…」
打たれた中邑はガックリと肩を落とす。
浅倉が移籍後初アーチでキングダムが先制点を挙げた。
「まるで今のコースを読んでいたかのようなスイングだな」
櫻井はサインを読まれているのではないかと感じた。
浅倉はゆっくりとベースを回ってホームイン。
「タ、タイム」
七海がタイムをとり、マウンドに駆け寄る。
「七海さん、あの球をレフトスタンドに運ぶとは…もしかして、サインが読まれてるんじゃ…」
「い、いや…そんな事は無いだろう!相手は浅倉だし、偶然読みが当たっただけだ!今日は球が走ってるんだし、次で断ち切ろう!」
「は、はぁ…」
先程までの勢いはどこへやら、途端に弱気になってしまった。
【4番ファースト ロドリゲス。背番号44】
浅倉同様、昨日はノーヒットに終わったロドリゲスだが、キングダムで最も警戒しなければならないバッターだ。
巨体を揺すらし、ノッシノッシと歩を進め右打席に入る。
一見強面の顔だが、陽気なドミニカンでチームでも1,2を争う人気者だ。
来日6年目でコンスタントに3割30本をマークする右の大砲だが、実は三振の少ないバッターとしても有名。
「フフっ、さっきの一発で意気消沈か…エースナンバーを付けてるクセに、ノミの心臓だな」
翔田がその様子を見て不敵に笑う。
浅倉に一発を打たれた直後とあって、心中は穏やかではない。
「ヨシヒコ、さっきのホームランは忘れろ!気持ちを切り替えて、ロドリゲスを打ち取る事に集中するんだ!」
「…七海さん、今度はオレがサインを出します」
「エッ?」
「万が一という事もあるし、ここはオレがサインを出しますよ」
「オレのサインが信用出来ないっていうのかよ?」
七海の表情が変わる。
「そうは言ってないですが、念の為ですよ」
「そう言ってるようなモンだろうが!」
「違いますって!ただ、ちょっと引っ掛かるところがあるんで、試しにオレがサインを出して様子を見たいんです」
「考えすぎだろ、サインなんか読まれるワケが無いだろう」
「…分かりましたよ、じゃあリードお願いします」
納得がいかないが、七海を怒らせても仕方ないので七海に従った。
「プレイ!」
ロドリゲスはバッターボックスで巨体を小刻みに揺らしながらリズムをとっている。
(さっきのはマグレだ…初球はこれでいこう)
七海がサインを出す。
(攻め方は間違ってないんだが…何か引っ掛かるんだよな)
渋々サインに頷き、初球を投げた。
インコース真ん中からボールになるフォークだ。
ロドリゲスは早々と構えを解いて見送る。
「ボール!」
「今の見送り方は…」
間違いない、サインは読まれている。
「タイム!」
今度は中邑がタイムをとった。
再び七海がマウンドに向かう。
「何だよ、今度は?」
「今の見ました?投げた瞬間、バットを下ろして見送ったんですよ!」
「お前さぁ、いちいち気にし過ぎなんだよ!相手はロドリゲスなんだぞ!ボール球に手を出さない事ぐらい、お前も分かってるだろ!」
「そうですけど、見送り方があまりにも不自然なんですよ!アレじゃ、球種は分かってるって言ってる様な見送り方ですよ」
「…うるせぇな、ったく…じゃあ、次からはお前がサインを出せ!」
憮然とした表情で吐き捨てると、さっさとマウンドを下りて守備についた。
(七海さんのリードは読まれている…今度はオレがリードして抑えるしかない)
中邑がサインを出した。
ゆったりとしたモーションから2球目を投げた。
真ん中から外へ外れるスライダー、見送ればボールになるが際どいコースだ。
「…haッ!」
ロドリゲスは長いリーチを生かしたスイングでボールを捕らえた。
「何っ!」
これまたジャストミート。
今度はライトへグーンと伸びる。
ライト唐澤が俊足を飛ばして懸命にバックする。
フェンス手前まで追いつき、ジャンプして腕を伸ばした。
「あっ…」
ボールはグラブをかすめ、スタンド最前列に飛び込んだ。
「ウソだ…あのコースを読んでいたというのか…」
浅倉に続き、ロドリゲスの連続ホームランで更に1点追加。
七海が再びタイムをかけてマウンドに向かった。
「おい、打たれたじゃねぇかよ!オレよりもお前のサインが読まれてるんじゃないのか!」
「イヤ、そんなハズは…」
中邑も困惑するばかりだ。
「どちらがサインを出しても、滅多打ちに遭うんだから、気が済むまで揉めればいい…フフフ」
翔田は中邑の配球を読んでいた。
中邑は左の強打者に対してツーシーム、右の強打者にはスライダーと第1打席の初球に投げる。
つまり、それさえ分かれば狙い打ちしただけでオーバーフェンスとなる。
翔田はスコアラーに中邑のピッチングを録るよう命じた。
そこで分かったのは、中邑が初球に投げる球種とコースが2パターンあるという事。
「次の打席では使えないが、中途半端な攻略法だけにバレる事無く打ち崩す事が出来る」
この攻略法が発揮出来るのは第1打席のみ。
だが、初回に点を獲っておけば、試合は有利に進められる。
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