The Baseball 主砲の一振り 続編3

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キャンプイン

チーム改革

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果たして櫻井が考案したスタイルでスカイウォーカーズはペナント奪回出来るのだろうか。


不安材料はかなりある。


野手では森高、石川の二遊間に鬼束の外野守備。

攻撃面では、森高の4番にジョーンズ、財前の8番9番コンビが期待通りの活躍をするか。


投手では、先発陣の駒不足に新守護神降谷が活躍出来るかどうか。


何もムリに変えなくてもいいものを、と思うのだろうが、櫻井は将来的な事を考え、このような大幅な改革を考案した。


そんな中、ドラフト2位の滝沢がまるでベテラン正捕手並みのキャッチングを披露する。


即戦力のキャッチャーというだけあって、フレーミング、スローイングの速さ、送球の正確さは正捕手の保坂と同様、それ以上の上手さだ。


問題はリードとバッティングだが、キャッチャーとしての素質は十分。


(彼はこのままの調子で行けば開幕一軍も夢じゃないかも)


櫻井は期待をよせる。


一方、ドラフト1位の冴島もブルペンで投げ込みをする。


保坂が球を受けるが、ボールのキレはイマイチだ。


「おい、どうした?ボールが来てないぞ!キンチョーしてるのか?」


保坂が檄を飛ばす。


「いえ、そんな事は無いです!」


冴島は何度も首を傾げる。


思った通りに投げられないのか、それともまだ調整中なのか、冴島は困惑する。


「なぁ、真咲…冴島のフォーム、少し改造した方がいいんじゃないか?」


チーフピッチングコーチの高峰が隣の真咲に聞く。


「アレじゃないすか、上半身と下半身の動きが上手くいってないんですよ」


「やっぱりそうか…上半身に頼り過ぎな投げ方をしてる様に見えるんだよな」


「少し矯正する必要があるかもしんないっすね」


早速フォームの矯正に取り掛かった。


ドラフト1位の冴島よりも、4位指名で入団した神楽のピッチングに注目が集まる。


神楽は昨年までマイナーリーグ、2Aのワシントン・イーグルスでプレーしていた。


大学を中退して単身渡米。


メジャーに昇格する事を夢見ていたが、スカイウォーカーズの駐在スカウトが素質を見抜き、ドラフト4位で指名した。


160km/h近い速球とナチュラルに変化する【真っスラ】、そして落差の大きいフォークで三振を獲るピッチングが持ち味だ。


課題は制球難で荒削りだが、磨けば光る逸材とあって、高峰は下でじっくり育てたいつもりだ。



再びグラウンドに戻すと、現役を引退して今年から打撃コーチ専任となる畑中が、ジョーンズにトスバッティングをしている。


スイングをする度に汗が飛び散る。


「ヘイ、どうしたジョーンズ!ヘッドが下がってるぞ!」


「ハイ、ガンバリマス…」


たどたどしい日本語で返事をする。



「いいか、ジョーンズ!お前に期待するのはホームランだ!Don't worry about strikeouts. Go for a home run!(三振なんか気にせず、ホームランを狙え!)」


「Okay, coach!(オーケー、コーチ!)」


櫻井はジョーンズに当てるだけのバッティングをせずに、持ち味でもある長打を打つよう伝えた。


いくら三振しても、一発があるのは魅力だ。


小さくまとまるよりも、長所を生かす事が大事だと。



「いよ~、やってるねぇ!」


脳天気な声がグラウンドに響く。


「あ、GM!」


GMに就任した榊がスーツ姿でグラウンドに現れた。


「ムヒョヒョヒョヒョヒョ!初日だけあって、活気があっていいぬーーーん!」


横にはオーナーが。

視察に来たのだろう。


「榊さん、オーナー、わざわざ起こしいただいてありがとうございます!」


櫻井が帽子を取って挨拶をする。


「あぁ、あちきの事は気にしなくていいから、頑張ってくれだぬーーん!」


「オーナーさぁ、せっかくキャンプ地に来たんだから、何か差し入れ持ってくりゃいいのに」


「にゃんと!これはウッカリしていたぬ!選手がハードな練習に耐えるよう、肉でも用意しておこうかぬ!」


「いえ、オーナー…そんな気を使わないでください」


「いいんだよ、ヒロト!オーナー、ついでに酒も用意してくれよ」


図々しいGMだ。


「にゃるほど、明日への活力源という事かぬ。早速用意するよう、手配するぬーーーん!」


その日の夕方、宿舎に大量の肉と酒が届いた。
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