The Baseball 主砲の一振り 続編3

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キャンプイン

2月1日

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年が明け、選手達は自主トレを行う。

ある者は国内で、またある者は海外で身体を仕上げる。



2月、スカイウォーカーズは毎年行っている沖縄県糸満市で、約1ヶ月間の春季キャンプをスタートさせる。


キャンプインとあって、この日は報道陣の数が多い。


今年からメジャーリーグ、ボストン・ビーンズでプレーした左腕のクレイグ・マクダウェルが来日。

初日からキャンプに参加した。


背番号はメジャーの時と同じ31。


180cm86kgとメジャーではやや小柄な選手だが、大物助っ人という雰囲気を身に纏っている。



そして、昨年三冠王に輝きMVPを受賞した財前はシルバーアッシュの髪から一転、ド派手なブルーに染めてグラウンドに現れた。


「ざ、財前選手…去年はシルバーアッシュで今年はブルーですか?」


「ん?あぁ、これね…今年はシルバーからブルーにイメチェンだぜ!
どう、似合ってる?」


「は、はぁ…」


返答に困る質問だ。




「Hey, Takahiro!(ヘイ、タカヒロ)」


マクダウェルはスロー調整を許されており、黙々とストレッチを入念に行い、その後はキャッチボールで肩慣らしを始めた。


「Hey, Craig!Long time no see!(よぉ、クレイグ!久しぶりだな!)」


久々の対面とあって、2人はハグをした。


「I never expected you to play in Japan.(まさかお前が日本でプレーするとは思わなかったよ)」


「I didn't know you would go back to Japan to play.(オレだって、お前が日本に帰ってプレーしてるなんて思わなかったよ)」


マクダウェルに専属の通訳は付いてない。

代わりに財前がマクダウェルのフォローをするというのが入団の条件だった。


「If there is anything you don't understand, please ask me anything.(分からない事があったら、何でも聞いてくれ)」


「Thank you. I'm reassured.(ありがとう、心強いよ)」



早速、2人はキャッチボールを始めた。



新戦力はマクダウェルだけではない。

ドラフト1位の冴島、2位の滝沢も一軍キャンプでスタートする。


今年2年目となる森高は、大和内野守備走塁コーチのノックを受けて、初日から泥まみれになる。


今年からセカンドへコンバートとあって、開幕に標準を合わせている。


その森高と入れ替わりに外野を守る事になった鬼束は、外野手用のグラブを手にこちらも余念が無い。



プルペンでは、去年ケガで不本意な成績に終わった片山がキャッチャーを座らせてキレのあるボールを投げる。


今年からコーチを兼任する真咲はブルペンでその様子を見守る。


「う~ん、今年はどういうローテーションを組めばいいのか」


櫻井は起用法に悩む。


現段階でローテーションに入るのは、中邑 東山 桐生の3人。

去年最多勝の真咲はコーチ兼任もあって、今年ローテーション入りさせるのは酷だ。


ケガから復活した片山 ルーキー冴島 助っ人のマクダウェルといった左の3人がローテーション入りしてくれれば助かるのだが、計算通りにはいかない。


中継ぎでは、左のアクーニャ ロングリリーフも可能な梁屋。

右ではサイドスローの東雲 速球派の流川。


左のワンポイントとして、左のアンダースロー寶井も順調な仕上がりだ。


そして抑えは今年からジェイクに代わり、降谷が新守護神となる。


そのジェイクだが、今年は二軍のキャンプからスタートした。


櫻井に命じられた新球マスターに取り掛かっている。



野手の方では、主力選手が自主トレで各自順調な仕上がりを見せ、フリーバッティングで快音を響かせる。


ローテーションと同様、打順も去年より大幅に変更する予定だ。


1ライト 唐澤
2ショート 石川
3ファースト 結城
4セカンド 森高
5レフト 鬼束
6サード 毒島
7キャッチャー 保坂(七海)
8指名打者 ジョーンズ
9センター 財前

櫻井の考案したオーダーは、榊の時より攻撃的なオーダーで、今年から指名打者制が採用されるとあって、どの打順からでも点が取れる打線に作り上げるつもりだ。

注目する点は3つ。


去年までショートのレギュラーだった筧に代わり、石川を抜擢するつもりだ。


175cmと小柄で小技を持ち味とする筧とは対照的に、187cmと長身に加え、強肩強打の石川。


その石川と二遊間を守るのが、186cmの森高。


日本の野球では、小兵ですばしっこい二遊間というイメージだったが、櫻井は大型二遊間で売り出すつもりだ。

その森高は4番を担う。


結城や鬼束といったスラッガーを前後に置いて、若き4番が持ち前の長打力を発揮出来るかどうかがカギを握る。


下位打線では、8番指名打者のジョーンズと9番財前のコンビ。



本名アルバート・ウィリー・ジョーンズ。

右投左打の外野手で、現在25才。


外野手として登録されているが、あまりの拙守に二軍の試合でも守備についてない。


193cmという長身で黒人特有の身体能力の高さを生かした俊足とパワーが持ち味。


荒削りで三振は多いが、それを補う程の長打力を兼ね備えている。


そして9番は去年三冠王の財前。

三冠王が9番に座るのは前代未聞だが、櫻井は第2のクリーンナップとして8番9番の打順こそがスカイウォーカーズ打線の軸だと考えた。


相手チームには驚異的な打順でもあるが、懸念もある。

ジョーンズの未知数と、3番以外では全く打てない財前が機能するか。


「これに懸けるしかない…最悪今年ダメでも、来年には何とかなるかも…」


総合的に見ても、スカイウォーカーズは前途多難だ。
    
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