The Baseball 主砲の一振り 続編3

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逆襲のスーパースター

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相性の悪さは早くも露になる。


カウントツーナッシングから投じた127km/hのストレートをロドリゲスはフルスイング。


打球はピンポン玉の様にグーンとセンターバックスクリーンへ飛び込む先制の第16号ソロホームラン。


「アチャ~…早速打たれちまったか」


打たれた真咲は悔しがる様子もなく、やっちまったな!的な表情を浮かべている。


一塁側キングダムベンチでは翔田がガッツポーズをしている。


「ヨシ、先制点だ!今日の調子ならば、1点あれば十分」


この1点を守って逃げ切るつもりだ。



真咲は次のバッター稲葉を空振りの三振に取って1回の裏は終了。


その後は翔田、真咲の投げ合いで回は6回の表へ。


ここまで翔田は3安打無四球、6奪三振とスカイウォーカーズ打線を無得点に抑える。


この回先頭の2番筧がサード強襲の内野安打で出塁。


次のバッターは3番の財前。


第1打席は三振、第2打席はライトフライと翔田に抑えられてる。


この打席で財前はいつも使っているミドルバランスタイプのバットから、アベレージヒッター用のグリップの太いバットを使用する。


「もっと年取ってパワーが無くなった時に使おうとしてたバットをここで使う事になるとはなぁ」


財前は選手生活の晩年にこのバットを使用し、ヒットを量産させようと考えていた。


「さぁ、来やがれスーパースター!」


「いくらメジャー帰りとは言え、バットを変えたところで、オレの球は打てませんよ財前センパイ…」


マウンド上で翔田が不敵な笑みを浮かべる。


今までには無かった表情だ。



いつものノーワインドアップではなく、ワインドアップで初球を投げた。


スピードの乗ったストレートがズドーン!とインコース低目に決まった。


「ストライク!」


スピードガンは165km/hを計測した。



「おい、今のスゲー速かったな」


「ワインドアップで投げたせいもあるんでしょうが、威力のあるストレートですね…」


今までの投球フォームはノーワインドアップからややスリークォーター気味に投げていたが、この打席ではワインドアップからのオーバースローで投げた。


ファームにいた期間、投球フォームを改造した。


「速ぇな…ここにきて、ようやくホントのピッチングを披露しようってか」


確かに速いが、メジャーでは100㍄(約162km/h)を超えるピッチャーはザラにいる。


財前は速球派揃いのメジャーでワールシリーズ制覇をして、MVPにも輝いた。


「オレの新たなピッチングがどこまで通用するか、試すには絶好の相手だ」


翔田のギアが更に上がった。


サインを出し、丸藤がやや外寄りにミットを構える。


「確かにスゲー球を投げるけどな…1つ欠点を見つけたぜ」


「…何だと、欠点だ?」


丸藤がその言葉に反応する。


そしてワインドアップからのオーバースローで2球目を投げた。


先程と同じ速さのボールが唸りを上げて外角低目に変化した。

「ボール!」

際どいコースだが、判定はボール。

財前は微動だにしない。


「おい、今の球に手が出なかったんだろ?何が、欠点を見つけただ…所詮はハッタリだろうが」


そう言うと、丸藤はボールを返球した。


「ハッタリ?つくづくめでてぇヤツだな、テメーは。
現にこうやって欠点が浮き彫りになってるじゃねえかよ」


「あぁ?どこが欠点なんだよ…打てねえからって、揺さぶりをかけてるだけじゃねえか」


「ほー、そうかい…なら、そこで欠点を見つけたらどうだ?まぁ、オメーには分かっても直す事が出来ねえだろうな」


財前の言う欠点とは何か。


再び翔田はサインを出し、今度は丸藤が定位置でミットを構えた。


翔田の3球目、今度は真ん中低目からストーンと落ち、ワンバンになったボールを膝をついてキャッチ。


「ボールツー!」


146km/hのスプリットがベース手前で鋭く落ちた。


主審が新しいボールと交換し、丸藤は翔田に返球する。


「よぉ、メジャーリーガー…お前がいくら口撃しようとも、ウチの新監督を攻略する事は出来ないんだよ」


「呆れたヤツだな、テメーは…オレが何で1度もバットを振らずに余裕で見逃してるのか分かんねえのかよ?」


「余裕?ウソつけ、余裕に見せかけただけだろ」


「分からなきゃ、そこでノホホンと球を受けてろ」


財前の見送り方には余裕がある。

まるで最初からコースが分かっていたかのように。


サインが決まり、再度インコース寄りにミットを構えた。


翔田は4球目を投げた。


瞬きする間も無く、速いストレートがインコースへ。


財前はこれも見送る。


「ストライクツー!」


これでカウントはツーナッシングとなった。


「次からアイツが投げる試合は相当苦戦するだろうな」


「ケッ、ようやく認めたかよ。アイツの球は誰一人打てやしねえんだよ」


丸藤の言葉に財前はヤレヤレというジェスチャーをする。


(コイツはアウトを取ったつもりでいるんだから、こんなバカが球界の盟主の正捕手ってんだから、お先真っ暗だなこのチームは)


バットを握り直す。


財前はバッティンググローブを付けずに素手でバットを握る。


「ヨシ、勝負だ」


バットを短く持った。


サインを出し、ミットを位置を少し上げて構えた。


翔田が5球目を投げた。


今度もストレート、だが財前はコンパクトなスイングでジャストミート。


「わっ、ヤバい…」


快音と共に鋭い地を這う打球がマウンド上の翔田に襲いかかる。


「グァっ…」


打球の速さに翔田は反応出来ず、カウンターパンチで跳ね返り、右足股関節に直撃。

右脚の膝外側に打球が当たり、ボールはショート頭上を超えた。

「ぐゎっっっっっ!」


翔田はもんどり打って倒れた。





打った財前は一塁でストップ。


審判がタイムをかけ、翔田の下へ駆けつける。


「グッ…グァァァァ!」

丸藤、内野陣も集まり、心配そうな表情で翔田を見る。


ベンチからトレーナーが飛び出し、当たった箇所に手を置く。


「うぁぁぁ…」

激痛のあまり、苦悶の表情を浮かべている。



トレーナーが手を貸し、治療の為マウンドを降りた。


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