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交流戦

バーチーヤンキースタジアム名物、地下闘技場

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「ふざけるな、おいっ!」

怒りにまかせ、畑中に掴みかかる。


「おい、止めろ唐澤!試合中だぞ!」


「ランナーを返さなきゃならない大事な場面なのに、初球で終わらせやがって!何考えてんだ、おいっ!」


あの場面、何としても追加点が欲しかった。
それなのに、初球でアッサリとゲッツーで終わってしまった。


「おいおい、変な言いがかりつけるなよ~っ。オレだって点を取ろうとホームランを狙っただけだろ」


「テメー…屁理屈言ってんじゃねえぞ!」


更に突っかかる。


「おい、止めろっ!唐澤!いい加減にしろ!」


選手達が止めに入った。



「何なんだよ、一体!そんなにオレが凡退したのが気に入らないのかよ」



「何で一塁へ全力で走らないんだっ!全力で走ったらゲッツーは免れたかもしれないのにっ!」


唐澤の言う事はもっともだ。


ボテボテのピッチャーゴロとはいえ、畑中は全力で走るべきだった。


しかし、彼はアキレス腱を断裂して以来、全力で走る事が困難な状態だ。



大事をとって、敢えて全力で走らなかった。


それが唐澤の怒りを買った。


「なぁ、天才クン。オレは10割バッターじゃないんだぜ?必ずしも点が取れるなんて保証はねえんだよ!」


「少しは責任を感じたらどうなんだ、おいっ!」


「唐澤っ!落ち着け!」


試合どころじゃない様子だ。



「おーい、そのへんで止めておけ!」


榊は止める気配すら無い。


「カントク!何とかあの2人を止めてくださいよっ!」



「ん~っ…めんどくせぇ、このままやらせておけ」


「何言ってんですかっ!!」


「ほっとけ、そのうち収まるだろ」


ホントに無責任な監督だ…


選手やコーチ達が何とか2人を引き離し、騒ぎは収まった。


しかし、このままで済むはずが無い。



試合は唐澤のホームランが決勝点となり、マシンガンズに連勝した。



試合後、榊は2人の乱闘騒ぎについて


「たまにはケンカする事だってあるんだし、そんなのいちいち気にしてらんないっつーの!

それよか、今日財布忘れちゃってさぁ!
誰か金貸してくんない?」


またもや記者から2万円を借りたが、あっという間にスロットに突っ込んでスッカラカンになった。















スカイウォーカーズナインは沖縄から地元武蔵野へ戻り、明日から長野ニックスとの二連戦に挑む。



しかし気になるのは唐澤と畑中の2人だ。




この日、榊は唐澤と畑中を呼び、マネージャーの運転する車に乗って千葉県へ向かった。



「カントクー、一体何処へ行くんすか?」


「…」

唐澤は無言だ。


「いいからいいから、行けばわかるって」


相変わらず呑気な人だ。

「おい、着いたぞ!」

場所は利根川の畔で茨城県との県境。


「あれ、ここって」


「そう、バーチーヤンキースタジアムだ」


何と、千葉ヤンキースの本拠地であるバーチーヤンキースタジアムだ。



「明日はヤンキースじゃなく、長野ニックスなのに何でここへ?」


唐澤は訝しげる。


「いいから、2人とも付いて来い」


球場内に入った。


選手専用通路を抜けると先にはベンチが見える。


「おい、そこじゃないぞ」


「え、何処へ?」


「グランドじゃないの?」


「こっちだよ」


榊はベンチ脇の扉を開けた。


「あれ?」

「何、これ?」

そこは地下へと続く階段が。


「こっちだ」


榊に続いて階段を下りる。


「へぇ、球場に地下があるなんて初めて知ったぜ」


「…」


「ここだ」


階段を下りた先には、何体もの仁王像が鎮座する広い空間。


「何だ、これは」


「仁王像…」

2人が不思議がるのも無理は無い。


この地下はヤンキース内での揉め事を解決するのに用いる、伝説の地下闘技場だ。


かつて守山達がバトルを繰り広げた闘技場でもある。


どういうわけか、榊はヤンキース関係者に了解を得て地下闘技場を借りたらしい。


「よーし、お前ら今からここでバトルしろ」


「な…」


「えっ、バトル?」


呆気にとられている。


「ケンカだよ、ケンカ!お前ら、いつまでもグダグダやってないで、ここで決着つけろって事だ!」


「はぁ…ここでバトルって…」


「…チッ」


「オレが立会人として、このバトルを見届ける!だから思う存分やりあえ!」


「フッ…だってよ!どうするよ、天才クン」


畑中は余裕の笑みを浮かべる。


「望むところだ…」

唐澤は意を決したような表情をしている。


「その前にと…素手だと拳を痛めるから、これをはめろ」

榊が2人にオープンフィンガーグローブを渡した。


「これは?」


「何だ、知らんのか?総合格闘技で使用するグローブだ。これなら、殴るだけじゃなく相手を掴む事も出来る。どうだ、便利だろ?」


「ほぇ~っ、まさか野球選手になってこんなグローブはめるなんて、思いもよらなかったゎ」


「やってやる…」

唐澤は早くもやる気満々だ。



「おい、天才クン。一つだけ教えといてやるよ」


「…」


「オレは強いぜ!それでもやるってのか?」


自信満々の表情だ。


「どうせハッタリだ」


「よし、では試合開始!」


バトルが開始した。
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