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第2章
説得
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片野は教室を出て行ったきり、帰ってこなかった。
「片野さんは何処へ行ったの?」
「アイツ、帰ったんじゃないの」
多分そう思う。
「えーっ!帰ったって…それじゃ連れ戻さなきゃダメでしょ?」
佐伯は慌てて教室を出た。
アイツもしかして、芝居やりたいんじゃないだろうか。
子役のイメージが強いから、成長したらどんな役者になるのか、本人も悩んでるのだろう。
「智、片野はダメだよ。アイツ抜きでやろう」
「ん~、それだとフツーの劇になるしなぁ…」
「いいじゃん!だってアイツ、協力する気ゼロだぜ」
そうなんだよな、アイツにとっちゃ、文化祭の劇なんてお遊びみたいなもんだし。
「さぁ、困ったわね~」
また、出てきやがった。
もう、驚かないよ。
「お前、アイツの代わりに主役やるか?」
梅に芝居が出来るとは思わないけど、コイツが主役ならインパクト強いし、面白い劇になるとは思うんだが。
「あら、私が主役?いいわよ。皆、私の魅力にウットリするかもね~」
「お前も茶坊主みたいに、転校生として姿を現すのかよ」
いや、コイツが中2という設定は無理があるだろう。
「それいいかもね!私も転校生になって、皆の前に出ようかなぁ」
その前に、金髪に染めた髪とネイルをなんとかしろ!
担任のいなくなった教室では、龍也と泰彦が前で文化祭の出し物について説明している。
「昨日オレたちで話し合ったんだけど、ウチのクラスは劇にしようかと思うんだ」
『劇かよ…』
『どんな劇にするの?』
ザワザワザワザワ…
「それを今から皆で考えよう。どんな劇がいいと思う?」
シーン…
無しかよ…
「何かないのかよ?例えばアクションとか、ラブコメとか、アットホームとかさぁ」
『アクションったってなぁ…』
『ラブコメ面白そうかも!』
『いや、ホラーなんてどうだ?』
「シリアスなドラマなんてどうかな?」
オレはまだ、片野を諦めてない。
「山本、お前シリアスなドラマって言うけど、どんな内容にするんだよ?」
そりゃ、決まってるだろ!
「タイトルは家なき子。親を亡くし、天涯孤独の少女が大人の世界でもがきながらも、必死で生きていくストーリーなんてどうだろ?」
「パクりじゃないの!」
いいんだよ、先にやった方がオリジナルになるんだし。
何なら、梅は主人公の母親役でキャスティングしてやろうか?
「コラ!何で、私が母親役なのよ!」
まぁそれはさておき、その芝居をするにしても、アイツがいなきゃ成り立たないワケで。
「面白そうな内容だけど、誰を主人公にするんだよ?」
勿論、片野だよ。
「主人公は片野だ」
「だから、アイツは無理に決まってるだろ!」
そう決めつけるなよ、龍也!
「よし、1週間くれ!その間にオレはアイツを説得する!」
「1週間なんかでアイツを説得出来るのかよ?」
オレには自信がある。
「出来る!もし出来なきゃ、オレは責任をとって、ボウズになる!」
ザワザワザワザワ…
『ボウズ?』
『ホントかよ?』
『絶対ボウズにしろよ!』
「よし、じゃあ山本!お前に任せた!その代わり1週間だけだぞ、いいな?」
1週間あれば十分だぜ、龍也!
「智、ホントに大丈夫なのかよ?」
「何だよ、チャッピー。マジで大丈夫だよ」
大丈夫なんだよ、オレには秘策があるんだ!
「あぁ~あ、これで1週間後にはボウズか…」
「何っ?おい、梅!オレがもし説得出来たら、元の世界に戻せよな」
いい加減、戻りたい!
「だから、梅は止めてって言ってるでしょ!サヤカと呼んで!」
何でサヤカなんだよ…何故、その名前にこだわる?
オレの案で、文化祭の出し物は一旦保留になった。
その日、片野は教室に戻らなかった。
どうやら、家にも帰ってないらしい。
先生達が片野を探しに回ったが、何処にもいない。
放課後、オレはデザイアーを連れて片野の家に行った。
何故、デザイアーなのか。
それは、デザイアーと片野は幼稚園の頃からの幼なじみだからだ。
教室ではあまり会話をしない2人だが、片野はデザイアーだけには心を開く。
子役として多忙を極めていた頃、デザイアーは片野に勉強を教えていたらしい。
子役なんてやってたから、学校ではほとんど友達がいなかった。
だが、デザイアーだけはそんな片野を見て、色々と手助けをしてあげてたという。
デザイアーに片野を説得してもらおうと思い、連れてきたってワケだ。
「悠はまだ、家に帰って来てないと思う…」
「んじゃ、何処に行ってるんだよ?」
デザイアーは、片野のいる場所を知ってるのだろうか…
「…もしかしたら、スタジオにいるかも…」
「スタジオ?」
スタジオって、何処?
「…ここから、電車に乗って3つ先の駅にあるスタジオじゃないかな…前に撮影したって言ってたし」
スタジオなんか行って、何してるんだ一体?
「デザイアーがそう言うなら、そのスタジオに行ってみようぜ」
ホントにスタジオにいるんだろうか?
とにかく行ってみよう。
「片野さんは何処へ行ったの?」
「アイツ、帰ったんじゃないの」
多分そう思う。
「えーっ!帰ったって…それじゃ連れ戻さなきゃダメでしょ?」
佐伯は慌てて教室を出た。
アイツもしかして、芝居やりたいんじゃないだろうか。
子役のイメージが強いから、成長したらどんな役者になるのか、本人も悩んでるのだろう。
「智、片野はダメだよ。アイツ抜きでやろう」
「ん~、それだとフツーの劇になるしなぁ…」
「いいじゃん!だってアイツ、協力する気ゼロだぜ」
そうなんだよな、アイツにとっちゃ、文化祭の劇なんてお遊びみたいなもんだし。
「さぁ、困ったわね~」
また、出てきやがった。
もう、驚かないよ。
「お前、アイツの代わりに主役やるか?」
梅に芝居が出来るとは思わないけど、コイツが主役ならインパクト強いし、面白い劇になるとは思うんだが。
「あら、私が主役?いいわよ。皆、私の魅力にウットリするかもね~」
「お前も茶坊主みたいに、転校生として姿を現すのかよ」
いや、コイツが中2という設定は無理があるだろう。
「それいいかもね!私も転校生になって、皆の前に出ようかなぁ」
その前に、金髪に染めた髪とネイルをなんとかしろ!
担任のいなくなった教室では、龍也と泰彦が前で文化祭の出し物について説明している。
「昨日オレたちで話し合ったんだけど、ウチのクラスは劇にしようかと思うんだ」
『劇かよ…』
『どんな劇にするの?』
ザワザワザワザワ…
「それを今から皆で考えよう。どんな劇がいいと思う?」
シーン…
無しかよ…
「何かないのかよ?例えばアクションとか、ラブコメとか、アットホームとかさぁ」
『アクションったってなぁ…』
『ラブコメ面白そうかも!』
『いや、ホラーなんてどうだ?』
「シリアスなドラマなんてどうかな?」
オレはまだ、片野を諦めてない。
「山本、お前シリアスなドラマって言うけど、どんな内容にするんだよ?」
そりゃ、決まってるだろ!
「タイトルは家なき子。親を亡くし、天涯孤独の少女が大人の世界でもがきながらも、必死で生きていくストーリーなんてどうだろ?」
「パクりじゃないの!」
いいんだよ、先にやった方がオリジナルになるんだし。
何なら、梅は主人公の母親役でキャスティングしてやろうか?
「コラ!何で、私が母親役なのよ!」
まぁそれはさておき、その芝居をするにしても、アイツがいなきゃ成り立たないワケで。
「面白そうな内容だけど、誰を主人公にするんだよ?」
勿論、片野だよ。
「主人公は片野だ」
「だから、アイツは無理に決まってるだろ!」
そう決めつけるなよ、龍也!
「よし、1週間くれ!その間にオレはアイツを説得する!」
「1週間なんかでアイツを説得出来るのかよ?」
オレには自信がある。
「出来る!もし出来なきゃ、オレは責任をとって、ボウズになる!」
ザワザワザワザワ…
『ボウズ?』
『ホントかよ?』
『絶対ボウズにしろよ!』
「よし、じゃあ山本!お前に任せた!その代わり1週間だけだぞ、いいな?」
1週間あれば十分だぜ、龍也!
「智、ホントに大丈夫なのかよ?」
「何だよ、チャッピー。マジで大丈夫だよ」
大丈夫なんだよ、オレには秘策があるんだ!
「あぁ~あ、これで1週間後にはボウズか…」
「何っ?おい、梅!オレがもし説得出来たら、元の世界に戻せよな」
いい加減、戻りたい!
「だから、梅は止めてって言ってるでしょ!サヤカと呼んで!」
何でサヤカなんだよ…何故、その名前にこだわる?
オレの案で、文化祭の出し物は一旦保留になった。
その日、片野は教室に戻らなかった。
どうやら、家にも帰ってないらしい。
先生達が片野を探しに回ったが、何処にもいない。
放課後、オレはデザイアーを連れて片野の家に行った。
何故、デザイアーなのか。
それは、デザイアーと片野は幼稚園の頃からの幼なじみだからだ。
教室ではあまり会話をしない2人だが、片野はデザイアーだけには心を開く。
子役として多忙を極めていた頃、デザイアーは片野に勉強を教えていたらしい。
子役なんてやってたから、学校ではほとんど友達がいなかった。
だが、デザイアーだけはそんな片野を見て、色々と手助けをしてあげてたという。
デザイアーに片野を説得してもらおうと思い、連れてきたってワケだ。
「悠はまだ、家に帰って来てないと思う…」
「んじゃ、何処に行ってるんだよ?」
デザイアーは、片野のいる場所を知ってるのだろうか…
「…もしかしたら、スタジオにいるかも…」
「スタジオ?」
スタジオって、何処?
「…ここから、電車に乗って3つ先の駅にあるスタジオじゃないかな…前に撮影したって言ってたし」
スタジオなんか行って、何してるんだ一体?
「デザイアーがそう言うなら、そのスタジオに行ってみようぜ」
ホントにスタジオにいるんだろうか?
とにかく行ってみよう。
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