4 / 4
第四話
しおりを挟む
安政六年五月、江戸北町奉行所の同心である私は夕方が過ぎて職務を終わろうとしていた。空には赤く大きな月が浮かんでいる。
「九条さん、同心の九条さん、事件です」
汗をかいた岡っ引きの一人が走ってきた。
「どうした」
「九条さん、大変です。九条さんは将棋が好きですよね」
「まあ、趣味程度の腕前だが」
「町人が死んでいます」
「町人か。どうせ単純ないざこざだろう。事件性もないから、岡っ引きでいざこざの犯人をしょっ引いて来たらどうだ」
あまり気が進まないな。
岡っ引きが騒ぐ
「発見者は、将棋指しとうるさい女です。
そのうるさい女が同心を呼んで来いといってるのです」
「うるさい女?」
「はい。何やら以前、九条と」
「発見者の将棋指しの名前は?」
「はい。上野房次郎と言っています」
「岡っ引き、上野房次郎と言えばあの有名な家元の伊東宗因先生なのか?」
「はい。最近襲名したらしいです」
これは伊東宗因と知り合いになる機会かもしれないな
「岡っ引き、それで死んだ町人の名は?」
「うるさい女によりますと、天野宗歩という名前です」
なに、あの在野の史上最強の天才棋士の天野宗歩が死んだのか
「岡っ引き、すぐ行く。現場に連れて参れ」
私は岡っ引きと一緒に現場まで急いだ。走りながら岡っ引きに聞いた。
「そういえば、岡っ引き、うるさい女というのは?」
「はい。池田菊女と名乗っています」
何、あの女か、女だてらに私をコテンパンに将棋で負かしたあの池田菊女。
「何でも天野宗歩という町人が日本刀のようなもので腹を滅多新りされて死体が血塗れになっているらしいです。しかし、玄関の扉が『しんばり棒』
引き戸を閉じたあと戸が開かぬようにつっかえとして使う棒のことですが、それが内側から固定されてて扉が開かなかったと、うるさい女が言っていました」
「そうなのか」
現場に着くと、見覚えのある生意気な女から声をかけられた
「同心の九条さん、私に将棋で負けて借りのある九条さん、借りを返す機会が来たわよ。
犯人を赦さない。何としても捕まえて」
池田菊女の眼から涙が零れていた。
私が池田菊女と会った二回目の事だった。
確かに現場を見ると、血塗れの畳の上で無惨に腹が斬り裂かれた死体が横たわっていた。
「九条さん、九条さん、どうしたの」
私は池田菊花に揺さぶられていた。
「今はいつだ」
「何言ってるのよ。令和6年でしょ。しっかりしてよ。さあ、客室に言って話を聞くわよ」
どうやら、池田菊花に少し前の指導対局のときに聞いた池田菊花の夢を思い出していたようだ。
まるで江戸時代にタイムリープしていた感じだったな。
「九条さん、同心の九条さん、事件です」
汗をかいた岡っ引きの一人が走ってきた。
「どうした」
「九条さん、大変です。九条さんは将棋が好きですよね」
「まあ、趣味程度の腕前だが」
「町人が死んでいます」
「町人か。どうせ単純ないざこざだろう。事件性もないから、岡っ引きでいざこざの犯人をしょっ引いて来たらどうだ」
あまり気が進まないな。
岡っ引きが騒ぐ
「発見者は、将棋指しとうるさい女です。
そのうるさい女が同心を呼んで来いといってるのです」
「うるさい女?」
「はい。何やら以前、九条と」
「発見者の将棋指しの名前は?」
「はい。上野房次郎と言っています」
「岡っ引き、上野房次郎と言えばあの有名な家元の伊東宗因先生なのか?」
「はい。最近襲名したらしいです」
これは伊東宗因と知り合いになる機会かもしれないな
「岡っ引き、それで死んだ町人の名は?」
「うるさい女によりますと、天野宗歩という名前です」
なに、あの在野の史上最強の天才棋士の天野宗歩が死んだのか
「岡っ引き、すぐ行く。現場に連れて参れ」
私は岡っ引きと一緒に現場まで急いだ。走りながら岡っ引きに聞いた。
「そういえば、岡っ引き、うるさい女というのは?」
「はい。池田菊女と名乗っています」
何、あの女か、女だてらに私をコテンパンに将棋で負かしたあの池田菊女。
「何でも天野宗歩という町人が日本刀のようなもので腹を滅多新りされて死体が血塗れになっているらしいです。しかし、玄関の扉が『しんばり棒』
引き戸を閉じたあと戸が開かぬようにつっかえとして使う棒のことですが、それが内側から固定されてて扉が開かなかったと、うるさい女が言っていました」
「そうなのか」
現場に着くと、見覚えのある生意気な女から声をかけられた
「同心の九条さん、私に将棋で負けて借りのある九条さん、借りを返す機会が来たわよ。
犯人を赦さない。何としても捕まえて」
池田菊女の眼から涙が零れていた。
私が池田菊女と会った二回目の事だった。
確かに現場を見ると、血塗れの畳の上で無惨に腹が斬り裂かれた死体が横たわっていた。
「九条さん、九条さん、どうしたの」
私は池田菊花に揺さぶられていた。
「今はいつだ」
「何言ってるのよ。令和6年でしょ。しっかりしてよ。さあ、客室に言って話を聞くわよ」
どうやら、池田菊花に少し前の指導対局のときに聞いた池田菊花の夢を思い出していたようだ。
まるで江戸時代にタイムリープしていた感じだったな。
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

物言わぬ家
itti(イッチ)
ミステリー
27年目にして、自分の出自と母の家系に纏わる謎が解けた奥村祐二。あれから2年。懐かしい従妹との再会が新たなミステリーを呼び起こすとは思わなかった。従妹の美乃利の先輩が、東京で行方不明になった。先輩を探す為上京した美乃利を手伝ううちに、不可解な事件にたどり着く。
そして、それはまたもや悲しい過去に纏わる事件に繋がっていく。
「✖✖✖Sケープゴート」の奥村祐二と先輩の水野が謎を解いていく物語です。

消えた弟
ぷりん
ミステリー
田舎で育った年の離れた兄弟2人。父親と母親と4人で仲良く暮らしていたが、ある日弟が行方不明に。しかし父親は何故か警察を嫌い頼ろうとしない。
大事な弟を探そうと、1人で孤軍奮闘していた兄はある不可思議な点に気付き始める。
果たして消えた弟はどこへ行ったのか。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

よもぎ喫茶へようこそ
やっすー
ミステリー
昔々山奥に「よもぎ喫茶」と呼ばれる喫茶店がありました。
そこの店主はちょっと変わり者。
でも、そこにはちょっと問題を抱えたお客様がご来店されます。
「さあ、あなたにぴったりのコーヒー入れて差し上げますよ」
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
魔女の虚像
睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。
彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。
事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。
●エブリスタにも掲載しています

存在証明X
ノア
ミステリー
存在証明Xは
1991年8月24日生まれ
血液型はA型
性別は 男であり女
身長は 198cmと161cm
体重は98kgと68kg
性格は穏やかで
他人を傷つけることを嫌い
自分で出来ることは
全て自分で完結させる。
寂しがりで夜
部屋を真っ暗にするのが嫌なわりに
真っ暗にしないと眠れない。
no longer exists…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる