3 / 4
第三話
しおりを挟む船長が現場にやってきた。
「加藤だ。海上保安庁と警視庁には連絡した。全力で東京の竹芝ふ頭に戻る。船内は一時的に船長に権限があるが、警視庁の刑事が乗船していると聞いたので、海上保安庁も警視庁も協力要請してかまわないということだった。ふ頭に戻るまでは協力をしてくれ」
「加藤船長、わかりました」
何故か私ではなく、池田菊花が返事をした。
「現場は動かさないほうがいいのか?簡易的な冷凍室が船内に備えられている」
私が池田菊花の前に出て、「ふ頭までは何時間くらいですか?」
「通常の計画航行なら明日の早朝に着く様にゆっくりと走らせる予定だったが。
少し天候が微妙だが、全速前進させる4時間もあれば着くのではないかと思う」
「加藤船長、それならば、犯人の証拠が現場にあると思われますので、できれば現場保全のまま、ふ頭に行ってほしいのですが。
現場保全のため、乗員のどなたかにこの前で監視していただけると助かります。
また、犯行時間にもよりますが、マスコミが下船したあとの時間であれば、乗員乗客が容疑者になります。船をふ頭に横付けしても、下船されないよう乗客に指示お願いします。」
「わかった。君たち二人に極力沿うように配慮しよう」
再び、池田菊花私の前に出る。
「加藤船長、さっそくですが、乗員の安否確認と状況確認をしたいで、館内放送を流してください。
船内で事件が起きたので、九条という刑事と池田が客室を尋ねると」
「わかった。そのように海上保安庁と警視庁に連絡する」
いや、私の隣の女性は刑事ではなく女流棋士なのだが。
船長が指示した乗員が2名現場に到着し、船長から細かな指示を受けている。
「船員に聞くと少し風が出てきたようだ。少し海が荒れるかもしれない」
「何かあれば城の建物の前にある操舵室に来てくれたまえ。私はそこにいる。
それと船内の管轄は便宜上船長にあるので何か分ったら、逐次報告してほしい」
「はい、わかりました」
何故か池田菊花が返事をした。
船長が去ると、「さあ、捜査するわよ。聞き込みよ。着いてきて」
「いや、君は自分の客室でおとなしくしてくれると助かるのだが」
「何を言っているのよ。
殺人犯が船内に潜んでいるのよ。
危ないじゃない。
あなたは私の守り神。私についてきなさい。聞き込みよ。
それにあの時だって、私のおかげで事件を解決できたのでしょう」
死体の有る客室の反対側の窓を眺めると、大きく赤い月が浮かんでいた。
ふと、数週間前に池田菊花に聞いた夢を思い出した。
夢か、池田菊花の夢の話だったよな。
今日の現場と同じような赤い月の夜、将棋指しの血みどろの死体があるというのが事件の始まりだった。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

物言わぬ家
itti(イッチ)
ミステリー
27年目にして、自分の出自と母の家系に纏わる謎が解けた奥村祐二。あれから2年。懐かしい従妹との再会が新たなミステリーを呼び起こすとは思わなかった。従妹の美乃利の先輩が、東京で行方不明になった。先輩を探す為上京した美乃利を手伝ううちに、不可解な事件にたどり着く。
そして、それはまたもや悲しい過去に纏わる事件に繋がっていく。
「✖✖✖Sケープゴート」の奥村祐二と先輩の水野が謎を解いていく物語です。

消えた弟
ぷりん
ミステリー
田舎で育った年の離れた兄弟2人。父親と母親と4人で仲良く暮らしていたが、ある日弟が行方不明に。しかし父親は何故か警察を嫌い頼ろうとしない。
大事な弟を探そうと、1人で孤軍奮闘していた兄はある不可思議な点に気付き始める。
果たして消えた弟はどこへ行ったのか。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

よもぎ喫茶へようこそ
やっすー
ミステリー
昔々山奥に「よもぎ喫茶」と呼ばれる喫茶店がありました。
そこの店主はちょっと変わり者。
でも、そこにはちょっと問題を抱えたお客様がご来店されます。
「さあ、あなたにぴったりのコーヒー入れて差し上げますよ」
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
魔女の虚像
睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。
彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。
事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。
●エブリスタにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる