赤い龍の神器で、アポフィスの悪魔を封印せよ

lavie800

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第三十話

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建物の裏を抜けると林のさらに奥の方に、二人が逃げているのが見えた。
ベクターとアリシアだ。
アリシアが後ろを振り返った。首元に赤く光るペンダントが見える。
私たちも必死で後を追った。
ベクターとアリシアは林の奥の方に向って走っていく。
林の奥の最後は、岩で囲まれた空洞のようなものが見える。
ベクターとアリシアはその岩の空洞の中に逃げこんだ。
ベクターたちを追って、私、マリナ、アーム、ルシアも岩の空洞の入口に向って走って行った。

私が最初に岩の空洞の入口に着いて奥をうかがった。
「岩の空洞の入口から奥を見ると、奥には更にダンジョンの入口が広がっているぞ」
天然のダンジョンなのか。それにしては岩の横の壁や上も綺麗に整備されている。
マリナがニヤリと笑う。獲物を狙う目をしている。
「この奥のダンジョンにベクターたちは逃げていったわ。
しかも迷路ではなく一方向でまっすぐ伸びて行って先は左に曲がっている単純な道しか見えないわ。もう袋のネズミね」

「また、オオコウモリの魔物がいるかもしれないな」
私は腰にムラマサの剣があるのを確認して、ダンジョンの周辺を見渡しながら進んでいった。
これでいつでも剣を抜くことができる。
私の後ろにティアラを頭上につけてマリナが続く。
ルシアも傷の手当てがいつでもできるように薬草を塗った白い布を用意している。
アームも短剣を握りしめている。
後ろから攻撃されないように、マリナの後にルシアとアームが後ろも確認しながらゆっくりと歩いていく。
マリナは私の手を握りダンジョンの奥に駆けだした。
暖かく柔らかいマリナの手だ。ただ私を引っ張る力は力強い。マリナの方が早く走れるかもしれない。
「リチャード、オオコウモリの魔物は居ないわ。先を急ぎましょう」

私とマリナがまっすぐのダンジョンを左に曲がって駆け出したとき、ガラッという音とともにダンジョンの上から木枠の檻が前と後ろから降りてきた。
マリナから手を離してすぐに前の木枠に走り寄って、木枠を上下左右に揺さぶってみたが頑丈で動かない。
茫然としていると上から網のようなものが降ってきた。
もがいたが網はべとべとしていて体が動かない。
後ろを見ると、マリナも網に捕まって地表にしゃがみ込んでいる」
後ろを見るとルシアとアームは木枠の檻の外だ。私とマリナだけが閉じ込められたのか。
(まずいな。これではルシアが檻の中にいないから無敵のティアラを武器に使えない。)

「罠に嵌ったな。
神器の剣を持っているローレンスのバカ王子とティアラを持っている女。
ここは自然の岩と木を利用した罠のダンジョンだ。
この蜘蛛の巣の糸のような網で体は動けないはず」
ベクターがダンジョンの奥から現れた。
横の岩で何か操作をしている。ベクターの横にはペンダントを首に飾っている女がいる。
前の檻の木枠が開いた。
私の身体はベタベタしている網で動かない。
ベクターがナイフを持ってゆっくり近づいてくる。
私の腰のムラマサの剣に近づくと、剣の部分だけナイフで切り取りベクターがムラマサの剣を取り上げた。
「お前にはもう用はない」
ベクターは網に絡まった私を足で蹴った。私は地面に転がった。
ベクターの横でアリシアが無表情に私とマリナを見ている。
胸元を広げて妖艶な雰囲気のアリシアが首に赤いペンダントを付けている。
(あれが、3つの神器の奇跡のペンダントなのか)
「アリシア、これでアーカート城とアーカートの地は私の物だ。
彗星が空からやってきた時、紫色に輝く彗星の欠片がこのブラックダイヤモンド島の林の中に落ちてきたが、そこにあった赤いペンダントをお前の首につけてやった。
このムラマサの剣と赤いペンダントをアーカート城のローレンツ王に見せれば、ローレンツ王の跡取りは私になるぞ。
戦わずしてアーカートが私の物だ」
ベクターは大きな声で高笑いをしている。

マリナが口をゆがめて叫んでいる。
「ベクター。お前にこのティアラは渡さない」
ベクターはナイフを持ってマリナのところに近寄る。
網で絡まっているマリナの頭のところにナイフを当ててティアラを抜き取った。
「マリナ、お前にこのティアラ似合わない」
さらに胸元が広い赤いワンピースの背中を切り裂いた。
「マリナ、お前は私のものになるはずだったのを裏切ったとタキ司祭に聞いたぞ。
今からでも遅くはない。私の所有物となれ。
ローレンス家を滅ぼし、奴隷となって私に仕えるのだ」

マリナは憤怒の形相でベクターを睨んでいる。
檻の向こうの方からルシアとアームも心配そうにマリナを見ている。
ベクターの足元を見ると、茶色の液体が付いている。
(ローレンツ王の時と同じだ。誰かに操られているのか?)

「マリナを傷つけるなどお前を絶対許さない。ムラマサの剣は絶対に渡さない。その件を返せ」
網で動けず地面に転がされていたが、ベクターに向けて私は叫んだ。

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