25 / 39
第二十四話
しおりを挟む(光っている方が魔物は居ないような気をするし、暗い右に行ってまたコウモリみたいな魔物がいるかもしれない)
マリナは私の顔色を見ながら、「最初は左よね」
そう言いながら、松明を持っているアームより先に左に駆け出して行った。
アームが慌てて付いて走る
「走ったら危ないぞ」
「リチャード様、私たちも行きましょう」
気が付くと私の胸のすぐ手前まで顔を近づけ、上目遣いで笑顔のルシアが小声で囁いた。
(何故かドキドキが止まらない)
エメラルドに光る方に足を向けると、先に走っていたマリナが叫んだ。
「これは何!」
アームがダンジョンの壁面を松明で翳すと、そこに壁画が現れた。
彗星が剣の形をして、山の頂きの地面に刺さっている画。
滝底の川を下っていく龍のような魔物の姿とその上に乗っている人がその先に見える帆船を見ている絵。
2つの壁画がダンジョンの壁に描かれている。
その下にはエメラルドの光の点が見える。やはりヒカリゴケのようだ。
「リチャード様、お兄様のメイ様も古文書を読んで3つの神器を探そうとして、同じようにこの壁画を見たのですね」
ルシアが壁画を見上げている。
「そうだな、ルシア」
「この絵は何を表しているのでしょうか?」
マリナが引き継ぐ。
「この画からするとアーカート山頂に赤い龍の紋章が刻印されたムラマサの剣がありそうね」
マリナはもう一つの画を食い入るように見つめている。
「それからこれはセントエルモの火。リチャードのお兄さんもこれを見ていた」
「そうだ」
「将棋のタイトル戦が終わって波にさらわれる直前に見たマント男と邪悪な眼と四つの牙の姿が見えたし、マント男は夢にも出てきたけれど、それとこの壁画の関係も興味深いわね。
ひょっとしたら、ここから戻れるのかも」
マリナが考え込む。
アームが松明を持って戻ってきた。
「リチャード様、このダンジョンの先は行き止まりのようです」
この壁画のあるダンジョンの先まで行って確かめていたようだ。
「行き止まりなのか」
「行き止まりではありますが、行き止まりの岩にも何か書いてあります」
アームが先導して、私とマリナとルシアも壁画の先に歩いて行った。
何かシャーという音がする。
(魔物なのか?)
そこに着くと確かに行き止まりだった。
魔物は、いなかった、
その地面の下に
『剣が岩から抜けない』
と書いてある。
「これは!メイ様の筆跡では?」
ルシアが興奮している。
左記の壁画とは全く違う画風だ。
シャーという音がまた聞こえた。
「何か音が聞こえないか?」
「確かに水が落ちているような音がします」
アームが耳を澄まして、行き止まりの岩あたりを探っている。
「リチャード様、この向こうから滝のような水が流れる音が聞こえてきます。」
茫然と立ち尽くす私に、マリナが言った。
「あっちに行くわよ。右の暗い方に何かがあるはず。ここは行き止まりよ」
マリナが号令をかける。
(やはり、リーダはマリナだ。暗がりのダンジョンは何が待ち構えているのか)
ダンジョンの分岐点に戻り暗がりの右の方に進むことにした。
松明を翳しても先が見えない。
暗闇が私の脳に恐怖の信号を伝えている。得体のしれない畏怖を感じる。
7
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる