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第二十三話

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アームが叫ぶ。
「リチャード様、普通のコウモリではなさそうです。
大きすぎます。魔物の一種かもしれません。
噛まれたら大変です」
私は震えながら短くなったソードを構える。
アームも左手に松明を右手に短剣をかざす。
もう一つの松明はダンジョンに地肌に置いたみたいだ。
オオコウモリの魔物の一匹が突然、気味の悪い鳴き声を上げてアームに近寄ってきた。
アームは短剣でコウモリの羽を狙う。
「リチャード様、ダメです。刃先が羽に当たってもびくともしません」
(どうすればいいのか?)
対策を考えていると、マリナは地肌にあった松明を取りオオコウモリに灯りを向ける。
「私が松明を持つわ」
ルシアはしゃがんでいる。
今度はオオコウモリがマリナに向ってきた。
「マリナ、危ないぞ」
怖がっているだけではだめだ。
足はすくんでいるが私は勇気を振り絞り、マリナに近寄り短くなったソードをオオコウモリの魔物の羽に向けた。
そうするとソードが勝手にオオコウモリの羽を貫き、ギャーという声と共にオオコウモリの魔物が蒸発して消えた。
オオコウモリが次々、アームとマリナを目掛けて飛んでくる。
「この魔物は灯りを目指して飛んでくるようだ」

(マリナをそして私に付いてきてくれるものを守れなくてどうする)
(さあ、どうする。コウモリは昔から苦手だが)

私はアームとマリナが持っている2つの松明を自分の地肌近くに引き寄せた。
アームの短剣とソードの2つを両手に持って、オオコウモリの魔物がマリナやアームやルシアではなく私を襲ってくるのを待った。
オオコウモリが発する甲高い声が近づいてきた。黒いオオコウモリの魔物が私を襲ってくる。
私が両手の剣をコウモリの羽に近づけると手と剣が勝手に動き、次々と両手の剣にオオコウモリの魔物の羽が当たり、魔物が蒸発して消えて行った。
オオコウモリの魔物を蒸発させても更に別の黒い影が襲ってきて、私は必死で両手をオオコウモリの羽に突き出した。
黒い魔物は次々と奇声を発したかと思うと剣に当たり蒸発していく。
何度も剣を魔物に突き出し振り回すうちにコウモリの鳴き声は聞こえなくなった。
どうやら、魔物は居なくなったようだ。
ぐっしょりと冷や汗をかいているようだ。

「さあ、先に行くぞ」
「リチャード様、私が短剣をコウモリの魔物の羽に突き刺したときは何も起こりませんでした」
マリナが静かに立って私の方を振り向いた。
「リチャードは剣で魔物を退治するスキルがあるようね。
それも突き刺すと魔物が蒸発して消えてしまうようなスキルが。
ただ小物の魔物は効果があるのだけれど、この前のオオダコのような大きな魔物は剣が折れて効果がなかったみたい。
だからもっと強い例えば赤い龍の紋章が刻印されたムラマサの剣が必要だと思う。
でも、立派なリーダよ」
「剣を振っても足はすくんで震えていたからな」
ルシアも声を上げる。
「頼もしいリーダですよ」
アームも頷いている。
(褒められたのか。うれしいような、守ってあげたいという気持ち。
いや、もっとそれ以上の感情が)
顔がにやけているのがわかる。

「さあ、先に進みましょう」
マリナが号令をかける。
(やはり、リーダはマリナか?)
ダンジョンをさらに進んでいくと、右と左に道が分かれている。
左の方は先が何かエメラルド色に仄かに光っている。
ヒカリゴケでもあるのだろうか。
「さて、どちらに行く?」
マリナがそう呟いて考えている。
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