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第二十二話
しおりを挟む河口を帆船で上っていくと、川幅が急に狭くなり、流れも海に向って急な流れになってく。
太陽がまぶしい。風は河口から川の上流に向けて吹いている。
アームが操舵する帆船は川の流れに逆らって、更に上流に進んでいく。
太陽光の自然エネルギーを利用して、帆の風だけではなく帆船の回転体の動力源も活用して進んでいるようだ。
帆船で川を上っていくと川の左右が断崖になってきた。
片側の断崖がアーカート山の山頂に通じるようだ。
更に断崖の間の急流を上っていく。
「あれは!
リチャード、祠じゃない?」
断崖のある一部に岩の塊がある。小さな岩山が断崖に隣接しているようだ。
その岩山の上に何か人工物が見える。
「アーム、この岩山の近くに帆船を停留させられるか」
「はい。リチャード様。錨を下ろします。
前にメイ様やトマスと来たところだと思います」
帆船を横付けすると私たちは小さな岩山に登って行った。
岩山の上には小さな祠が建ててあった。
祠の中央部分は空洞になっており、一番前には白い4つの鳥居のようなものがあった。
鳥居の奥には更に柵があり、柵の中は真っ暗だった。
「この柵、人一人くらいは通れそうね」
「はい、マリナ様。
メイ様がここで何か不思議な踊りと手拍子をすると鉄の柵の横にボタンのようなものが出てきて、メイ様がこの中に入って行きました。
私とトマスはここで待っていたり、私だけボートで城に戻ってまたお迎えに上がったりということをしておりました。
(この柵、どうやって開けるのだろう)
鉄の柵を揺すってみたり、柵の左辺りの色が変色していたので押してみたりしたが何も起こらなかった。
マリナが私の横に来た。
「4つの白い鳥居。
思い当たることが一つあるわ」
それとも他にもあるのかな」
私を引っ張ってきて横に侍らせる。
「ご利益があればいいな」
「さて、するよ。
2度拝礼して,
4回柏手を打ち,
最後にもう一度拝礼よ。
わかるでしょう。参拝よ。普通の神社ではなく出雲大社。
出雲大社は2拍手ではなく4回だからね」
マリナは目を閉じて、鳥居の前で二度拝礼しようとした。
私も慌ててそれを真似る。
拍手は、二人の心が通じたのか、見事に音を出すタイミングがあった。
最後にお辞儀をする。
私が顔を上げたら、マリナはまだぶつぶつ小声で何かを言っていた。
そして、ゆっくりと頭を上げた。
私が触っても動かなかった鉄の柵の左端にマリナが手を触れると、鉄の柵がゆっくりと動いた。
「マリナ、どういうことだ」
「魔法みたいなものよ。ここは異世界だから。
ここに来た先人が誤って誰かがはいらないように柵に仕掛けをしていたみたいね」
「どんな仕掛けだ?」
「はっきりとはわからないけれど日本の知識や先端技術に詳しい先人がいたのかも」
「と言うと?」
「まず、4つの白い鳥居は、出雲大社よ。
出雲大社と言えば、拍手は2回ではなく4回。
4回の音で作動するセンサーか何かね。この仕掛け。
ほら音で作動するスピーカがあるじゃない。
あれの凄いバージョンかも。」
「私が先に柵の左の色が変わった所を押したが何もなかった」
「だから、4回の音と微弱な電気のセンサーで柵が開くようにしていたのだと思うわ。
お兄さんのメイさんはマントを着ていたのよね。マントは静電気を起こしやすい。
私も雷に好かれるみたいだし、静電気を帯びやすい体質だと思う。
でも魔法で開けゴマで開いたと言った方がしっくりくるよね」
柵が開いた。
まず私が柵の中に入って行った。
「中は暗いぞ」
「リチャード様、船に松明を積んでおります。
至急持ってきます」
こうして私を含む4人とも岩山の祠にある鉄の柵から、ダンジョンの中に入って行った。
ダンジョンの中は意外と岩の道がしっかりとしていて縦に並べば4人で進むことができた。
頭上も私の頭よりはるかに高い。
アームが先頭で松明を持って歩いていく。
私、マリナ、最後にルシアの順で、ダンジョンを進んでいく。
奥の方から、不気味な鳴き声が聞こえてきた。
声が上の方に移動してきている。
アームが松明を上に翳すと、黒紫色の大きな羽のようなものが、頭上でスピンターンするような勢いで飛んだり反転したりしている。
気味が悪い。思わず足がすくむ。
ここに来たからといってすぐに性格までは変わらない。
「オオコウモリだぞ。気を付けろ」
そう言って、コウモリが過ぎ去るのを祈っていた。
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