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第十八話
しおりを挟む「アーム、謎は深まるばかりだな。
この船を操縦できそうか。
目的地をコンパスで指定するだけで自動的に帆船が走行するみたいだが」
(この帆船があの船だったら、太陽光の自然エネルギーで、船の操作もほとんど不要で、目的地をコンパスで指定するだけで走行可能のはず)
「まだ判断できませんが、そういえば、船室に鍵のようなものがあって、丸い操作盤のようなものと海図のようなものが有った気がします。
ボタンに絵があり何となく帆船の運転方法が分かったような気がいたします」
そういうと、アームは船室の方に戻って行った。
和室の中に戻った私はマリナに話しかけた。
「3つの神器かもしれない駒が見つかった。赤い月のある龍の駒かもしれない。」
駒を手に持った私はマリナに近づいた。
そして頭上のティアラの五角形の枠に、将棋の二つの駒である飛車と角を裏返して、押し込んだ。
マリナの頭上のティアラの枠に駒がぴったりと収まった。
「マリナ、ティアラに駒がぴったり収まったよ」
「リチャード、3つの神器のうちの一つは、凄まじい温度変化を引き起こす赤い月がある龍の駒に囲まれたティアラと古文書 に書いてあったのよね」
「そうだな」
「これは赤月昇龍斉という人が作った駒だけど。どうやって使うのかしら。
温度変化はどうしたらいいの?」
「もう一回駒を見てみるよ」
私はティアラから駒を外して入念に再度、駒を凝視してみた。
「わからない。ティアラの枠と駒のサイズはピッタリだ。
駒の作者は赤月昇龍斉だし、駒の裏側には龍王と龍馬だから、まさに赤い月がある龍の駒に囲まれたティアラになるはずだが」
「使い道は、後で考えましょう、3つ集めるのが先決よ」
「そうだな。アームが操縦席のある船室にいるはずだ。
アームも見つけたものがあるし、一旦教会に戻って考えよう」
「そうね」
「タコの魔物には注意しないと。
アームに運転できるか聞いてみよう」
マリナと運転室に行ったが、アームは居なかった。
運転室の奥には戸棚があり、開けてみると非常食が並べてあった。
乾パンや缶詰みたいだ。塩や胡椒の調味料までそろっている。
「リチャード様、アームです。
大丈夫ですか」
声のする方を見てみると、アームは船の外に出ており帆船の船腹付近で作業をしていた。
「リチャード様、マリナ様、もうすぐ満潮になります。
そうすれば、この船は再び海に浮かぶはずです」
アームは作業をしている。
「船腹を確かめましたが傷は無さそうです。
綱を足して波にさらわれないようにしています」
「アーム、海に浮かんだら甲板にいる私たちはどうやって戻ったらいい?」
「帆船に、小さなボートがございました。それで帆船と砂浜を行き来ができるようにします」
アームはてきぱきと作業している。
マリナと私は甲板でその作業を見ていたら、ルシアが甲板に上ってきた。
やがて帆船の船腹に潮が満ちてきて、木の軋む音がした。
アームが甲板に戻ってきた。
「リチャード様、このアームが帆船を操縦して見せます。
ボタンのようなものが絵になっていてわかりやすいです。
錨もボタンで操作できるみたいです。
少し沖合にクルージングしてみましょう。すぐ教会に戻れるところまで進めてみます。
アームはそういうと運転席のある船室に走って行った。
満潮になり風も出てきた。夕陽が沈むまでには、まだ時間がありそうだ。
ゆっくりと帆をなびかせて、令和の時代の最先端帆船が、アーカートの海をゆっくりと動いている。
「水平線が綺麗だわ」
帆船は静かな波をかき分けて進んでいる。
キラキラと輝くティアラを頭につけて、マリナは手を上にあげている。
水平線の先に黒く見える島がある。
「あの島は何だろう?」
私が聞いた島をルシアが答えた。
「あの島がブラックアイランド島でございます。
ローレンツ家の領土に度々侵入しようしてくるベクター家が縄張りにしている島でございます」
「そうなのか。それにしてもいい天気だ」
アームはこの帆船をブラックアイランドの方にゆっくり進めているみたいだ。
いい天気と言った途端、上空に稲光が走った。
急に黒い雲はこちらにやってくる。
静かだった海が急に灰色の潮に変わっている。
灰色の海が白いしぶきを上げ渦が巻き始めている。
帆船が大きく揺れた。
灰色の波柱が立ち、人間の倍くらいの長さの大きな紫色の足が海から現れた。
足には吸盤がある。
「タコの魔物の親玉か!」
帆船が更に揺れる。
吸盤の有る足が、甲板のほうに目指してやって来ようとしている。
「船室に駆け込もう!」
私はマリナの手を引いて、アームのいる甲板の後ろに向って走り始めた。
アームとルシアが船室のドアを開けて待っている。
(船室まであと一息だ)
後ろから影が迫っている。
(時間を稼がないと)
「マリナ、早く船室へ逃げろ」
私は振り向いて、影を見上げた。
「吸盤の魔物か。私が相手だ」
身体の震えは止まらなかったが甲板に居た小さなタコの魔物を突き刺したときのように、大きな吸盤の魔物の足に向って私は剣を振りかざした。
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