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第十三話
しおりを挟む城を追い出された私は、マリナ、アーム、ルシアの3人にこれまで起きたことを説明した。
(やれやれ。城を追い出されてもどうしたらいいのだろう。どうしたらいいか3人に聞いてみるか。
逆転のチャンスといっても3つの神器はどこにあるのだろう)
あてもなく私たちは砂浜のほうに歩いていた。
「マリナ、申し訳ない。アーカート城を追い出された」
「アームとルシアも巻き添えにしてしまってすまない」
アームとルシアは全く気にしていないと笑顔で私に言葉を返したが、マリナは押し黙っていた。
途方に暮れて、私は、マリナの顔を窺った。
まだ、将棋のタイトル戦のときの記憶は戻らないようだ。
「というと、まず、その3つの神器を見つけないといけないということなのね」
腕を上に伸ばして伸びをしていたマリナが急に話し始めた。
晴れていた天気も海の向こうから黒い雲がこちらにやってくるのが見えている。
稲光だ。
アームが私に声をかける。
「リチャード様、もうすぐ雨が降ってきそうですね。
とりあえず雨宿りする場所と何かお腹にいれるものを調達しないといけませんね。
教会に行きましょう。知り合いの修道女エミリが教会にいますから」
マリナが言葉を遮った。
「それはいいけれど、私は教会から追い出された身なのよ。城も教会も追い出されてばっかり」
「マリナ様、エミリならうまく口添えしてくれるかもしれません。
まあ、教会行ってみましょう。これからどうするかも決めないといけませんし休む場所が必要です。」
雷鳴も聞こえてきた。小雨が降ってきた。
「急ぎましょう、さあ、このアームに任せてください」
教会に着くと、アームが一人で教会の中に入って行った。
しばらくして、アームと修道女のエミリの姿が入口に見えた。
笑顔でアームが手招きしている。
私は、マリナとルシアに声をかけて教会の入口を目指して走って行った。
教会の入口近くには倒れた二本の大木があり、そのまま放置されている。
倒れた大木のうちの一本からは煙が立ち上っている。
まだ燃えているのか。
入口に着くと、アームが言った。
「タキ司祭は今いないそうです。
アリシアという女性を海の向こうの島に送っていっているそうです。
寄進の追加のお願いもしてくるらしいです。
2日後の夕方に教会に帰ってくる予定らしいです。
とりあえず今日と明日はこの教会に泊めてくれるそうです。」
(よかった。とりあえず先のことは考えず、今日明日はこの教会に泊めてもらおう。
その間にどうするか、考えよう。
待てよ。アリシアという女性は確か舞踏会にいたよな。どことなく妖しさ満点のあの派手な女性か)
「粗末な食事ですが、夕食でパンとコーンスープを用意しますね」
修道女のエミリは私たち4人にパンとスープを用意してくれた。
エミリがアームを見る視線が優しそうだ。
アームも心なしか嬉しそうだ。
(この二人、良い雰囲気の間柄なのかもしれない)
日が暮れて外は暗くなっている。
雨は降り続いているようだ。
マリナは一心不乱に食べ終わると、エミリに話しかけた。
「エミリさん、少し前に紫色の彗星の欠片がこの教会の近くに飛んできたらしいのよ。何か変わったことはなかった?
薄気味悪い彗星の欠片は4つに分かれたのだけれど、その内の一つが近くの砂浜の岩場の先に飛んで行ったから」
「そういえば、教会の入口に二本の倒れた大木があります。
一本はマリナさんがこの教会を出るときに落雷で倒れた木です。
もう一つの大木は倒れていませんでした。
それがあの彗星が飛んできた時に大きな音がしたのです。
そうしたらもう一つの大木も倒れていたのです」
マリナは立ち上がって何か喜んでいる。
「リチャード、倒れた大木を調べないと。何かわかるかも」
(城を追い出されたから、もう名前も呼び捨てか)
「マリナ、もう外は暗いから明日調査だな。
それにしてもこのスープは体が温まる」
「リチャード、彗星が4つの欠片に分かれて飛んで行ったのよね。
3つの神器の手がかりというとその4つのどれかだと思う。
この教会の近くと、アーカート山頂と、ブラックアイランド、それに城の奥の森の4つだよね。
彗星の欠片が飛んで行った所を探すと何か手がかりがあるかも」
「そうだな」
「そうよ、リチャード
すぐやらないと。
夕食のスープを飲み干したら、教会の外で調査よ。
エミリさん、灯りを貸してちょうだい」
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