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第四話
しおりを挟む私は羊皮紙の古文書を広げて、読んでみた。
(所々に汚れや紙の破れたところがあり文字が飛んでいる。
今から四百年くらい前の古文書のようだ。読めない文字は頭の中で※に変換して読み進めてみた)
“私は、ローレンツ・アーカートである。
この地を開拓しにやってきた豪族の主である。
この地をアーカートと名付けることにしよう“
“今から、この地で起きた恐ろしい出来事と私の子孫に託す大事なことを記すこととする。
私がこの地に城を建て、人を集め、城下の町つくりとして、教会を建てて子供の学校も作り、開墾された畑や魚釣りの船を建造していった。
教会の近くの砂浜にある日、船が漂流してきたのを私が偶然発見した。
船の中には可憐な長い髪の女性が意識を失った状態で発見されて、教会でしばらく司祭が面倒を見ることにした“
“町づくりが軌道に乗ってきた時に、突然、城の周りには紫色の霧が立ち込め、城の周りの砂浜には蛇の姿は数多く見られるようになってきた。
晴れた日が少なくなり、曇りや雨の日々が続くようになった。
そんな天気が続いたある日、空の上から長く尾をたなびかせた紫色の彗星が現れた。
城からもはっきり見えるようになり、そのせいか、床からも振動も感じ取れる
アーカートの森の何処からか突然に紫色の眩い光が現れ、彗星に飛んで行った。
紫色の光を浴びた彗星はいくつかの破片に分かれ、この地の近くに落ちて行った。
欠片の一つは、大きな爆発音と閃光が城からさほど離れていないアーカートの森の中から聞こえてきた。別の欠片は近くの砂浜の向こうに落ちたようだ。更に別の欠片は海を隔てた先の島に飛んで行った。
まるで忌まわしく邪悪な悪魔がこの地に踏み入れてきたようだ。
彗星の別の欠片は、一つはアーカート山の方に落ちて行った。一番大きな彗星の欠片はアーカート山を越えて見えなくなった。
“やがて、城の周りには蛇の数が増えて、森の中から咆哮のような気味の悪い声が気負えるようになってきた。
兵士といっしょに森の奥に行った女性の一人が帰ってくると様子がおかしくなるものが現れた。
勤勉で清楚だったその女性が何か取り付かれたように罪を犯したりするようになった。
兵士に聞いてみると女性は森の中で薄気味悪い蛇の舌から出る液を脚につけられたようだ。その後に蛇のとぐろで女性の足を絡まれたようだ。
幸い蛇には噛まれなかったのでその時は心配しなかったようだ。
この化け物は女性にとりつくのかもしれない。はたまたその化け物は女性に化けるのかもしれない。恐ろしいことだ“
“森の咆哮がひときわ大きくなってきた時、久しぶりに太陽が空に浮かんだ昼の天気が戻ってきたかと思うと、太陽が徐々に欠けてきて城の周りが夜のように暗くなり、最後には太陽が真っ黒な墨に覆いつくされ、禍々しい黒い円の外周が赤い光輪に包まれた。
そして彗星が落ちた森の奥は四方が焼き尽くされた“
“しばらくして森の奥の焼き尽くされた地肌の一角から邪悪な**が森の中から現れた”
“それは城や城下の町を襲うようになり、我兵の屈強な剣士の剣や槍や投石では※※の鱗や皮膚に傷をつけることもできなかった”
“船で漂流していて教会に預かってもらっていた女性の意識が戻ったとの知らせを受けて、私は教会に出向いた。
その女性は知的で愛らしく大きな二重の目を見開いて、太陽のような赤い唇をしていた。
そこで私は一目ぼれをしてしまったようだ。その女性を城に連れて帰ることにした。その女性が突然話し始めた”
『アーカート様、あれは**の形をした冥界の悪魔アポフィスでございます。
悪魔アポフィスはその昔、太陽の神に戦いで負け太陽の神の3つの神器により封印されました。
しかしながら、悪魔アポフィスは、何百年かの周期でこの地を回ってくる紫色の彗星が飛んできた時、封印が解けるのです』
“私はその女性になぜそのようなことを知っているのか。どうしたら良いのかを聞いてみた”
『私は日の本を意味する東方の島ジパンからやって参りました。
アーカート様に会うためでございます。
悪魔アポフィスと対峙するには、赤い龍の紋章が刻印されたムラマサの剣、赤い太陽光が輝く奇跡のペンダント、凄まじい温度変化を引き起こす赤い月がある龍の駒に囲まれたティアラが必要です。
それらを集めて私と契りを結び、アーカートの勇敢な男性の王と、太陽の光が源である太陽の子の私のパワーが重なるとき、3つの神器は私と勇敢な男性の王のもとに戻り、悪魔アポフィスを封印することができます。
悪魔アポフィスを封印する方法は、神器を身に着けた太陽の子と勇者がチャトランガの魔術によって封印されるのです。
太陽の子である私と契りを結ぶには、悪魔の封印が解けた地の選ばれし勇敢な男性の王であらねばなりません』
“チャトランガの魔術とは?”
『アーカート王、インドから東方のジパンに渡った龍の駒を使った魔術のことです』
“それでその3つの神器はどこにあるのか?”
ここまで私が羊皮紙を読み上げた時、従卒長のアームの声がした。
王の部屋の扉の外から声をかけているようだ。
床が突然振動し始めた。
「陛下、申し訳ございません。
城の周りが一段と紫色の霧で覆われて、空を見ると紫色の彗星が光を増して、この城の上空に来ております。
兵を準備したほうが良いかと存じます」
「アーム。わかった。
城の外を監視しに行こう。リチャードも来なさい」
年老いたローレンツ王は長い白髪をなびかせて、貴金属と真珠に飾られたドレスの裾を気にしながら、従卒長に案内させてゆっくりと城外に歩いて行った。
(そう。古文書のとおりとすれば、邪悪な存在に立ち向かうためには選ばれし勇敢な男性の王であらねばならない。
だから、女王であるローレンツ王は私にはできないと言ったのか)
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