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第三十一話最終回
しおりを挟む鶴姫と経好の三つの輝く肉体の三種の神器が合わさり、夜通し二人で絡み合い、男のうめき声と女の喘ぎ声が重なった。
二人の艶めかしい声が更に大きくなり二人で同時に絶頂を迎える時、寝床の横の剣、勾玉、宝珠も赤い輝きが強まり呼応して光のクライマックスを迎えたようだ。
結婚の儀の三日目の夜が終了して、快い疲れを感じて鶴姫は睡魔に誘い込まれた。
やがて鶏が鳴いて夜が明ける。
鶴姫が少し瞼を空けてスマホの表面を見るとタイムリープ以外のアイコンが消えている。
代わりに将棋というアイコンがあり、押すと将棋のゲームが起動した。
退屈しのぎで将棋でもしてみようかな。
それから三年がたった。
九州に出陣する経好は、京から来た宗也という商人が家臣と商談しているとき、商人の息子が将棋を指せると聞いて、経好は商人の息子を将棋盤に誘った。
「将棋は戦術に生かせる。それにしても若いのに将棋は強い。三番続けて桂馬をうまく使われて負けて今回も厳しい戦いじゃ」
相手の玉が自陣に攻め入る入玉を狙ってきたので、経好は危機を打開する妙手がないものか長考に沈んでいた。
「殿様 この高嶺城は大内家が築城し始めましたが、市川家が攻略し今の高嶺城として完成されたと聞きました」
市川経好は笑って再び盤を見つめている。
「殿様、少し席を外します」商人の息子は小用に立った。
妻の鶴姫は横でじっと将棋を見ていた。
鶴姫は昔から驚くほど非常に聡明である。
「殿様2九に桂馬を」
経好は「鶴姫は将棋を嗜むのか」
「いえ。少しだけ。玉を取れば勝ちなのですね」
商人の息子が戻ってきた。
経好はよくわからないまま、2九桂と指した。
商人の息子は顔を上気させた。
「負けました。お見事です。最後の桂馬が妙手でした」
経好は不思議そうに鶴姫を見ながら言った。
「いや。宗桂殿は本当に強い。特に桂馬の使い方が優れている。
あなたは、将来商人よりも、将棋の才能で身を立てるかもしれないな」
その夜、閨の中で鶴姫は経好に聞いた。
「殿様は近々出陣されます。高嶺城には私と家臣と300人の兵しか残りません。殿が留守のときにあの大内が攻めてきたらと思うと心配でございます。
大内が近くの島で兵を集めていると聞きます。
あの酒臭い息で鞭を持っている大内を思い出すと体が恐怖で震えるのです」
「鶴姫は聡明だし、赤龍の不思議な力を持っている。将棋のような知恵を思いつけば心配はいらん。危機が起きたらすぐに私に知らせるのじゃ。全軍率いてすぐ戻ってくる」
経好は愛おしそうに抱きしめ、再び鶴姫の唇を奪った。
「好きだ。愛している。鶴姫は私が守る」
経好はそう言ってゆっくりと鶴姫から離れた。
鶴姫はその夜に、かつての特大三島稲荷神社の宮司に向けて伝令を出した。
数日後、経好は若い家臣たちを集めて高嶺城を出て九州に出陣した。
それから間もなく、城主不在の高嶺城を狙って、わずか三里先に大内の三千の軍勢が近づいてきたのである。
高嶺城の本丸では、老いた家臣たちが集まって軍議を行っていた。
城内にいる兵は三百ほどであり、敵軍との兵力の差は歴然としていた。
重臣たちが諦めかけたころ、鶴姫が鎧をつけて臣下に言った。
「戦いは最初に心の中で勝ち負けが決まります。必ず勝つと心に念じるのです。まずやるべきことは殿にこの危機を知らせなくてはいけません。
殿の出陣先の九州に直線で伝令を飛ばすと敵にやられます。天守閣に上がり赤い狼煙を上げて瀬戸内海のある特大三島稲荷神社に合図を送るのです。
宮司は市川家の味方。宮司が所掌している水軍で海から殿様に伝達すれば敵に気づかれないはず。
そして籠城し殿が戻るまで耐えて見せるのです。
敵が山道をまっすぐに上って攻めてきたら郭の斜め上から石を投げて反撃するのです。直接相対すると兵力の差で負けます。
斜め前の思わぬ所から反撃するのです」
天守閣から赤い狼煙をあげると、鶴姫が少女の時に経好を救ったときの特大三島神社の所掌する水軍の船から天守閣に反射光が届いた。水軍の船は九州の方を向き、全速力で動き始めた。
九州に居た経好は、海からの特大三島神社の水軍の使者から大内が高嶺城を攻めようとしている情報を受け取った。
経好は一万の兵を全速力で高嶺城に昼夜問わず進み続けた。
鶴姫は胴に鎧をつけ、首には勾玉、へその下に宝珠を忍び込ませた。
スマホは最早何も反応が無いが、背中の赤龍の痣が輝き始めた。
まっすぐに高嶺城の山頂目指して攻めてくる大内軍に対し、鶴姫の部隊は、城の思わぬところから矢や石で反撃をした。
鶴姫が先頭に立ち、三百の兵を鼓舞し続ける。
「蛇と比べれば大内の軍勢など恐れるに足りん」
市川家の家来たちと次々叫んでいる。
高嶺城は大内軍からの攻撃に頑強に耐え続けた。
やがて、九州に陣を取っていた市川経好の軍に毛利軍が合流し一万の兵で高嶺城に到着し、一瞬で大内軍を散らした。
乱を率いた大内は、最後に経好のクラウソラスの剣で首をはねられた。
ここで大内軍は地上から完全に消滅したのである。
城内で再開を果たし、閨で鶴姫は抱きしめられた。
「経好様。殿、会いたかった」
「鶴姫、好きだ。愛している。もう誰にも邪魔はさせない」
閨の近くのクラウソラスの剣、勾玉、宝玉は赤く輝き、二人の肉体の三つの部位の赤龍の宝もシンクロした赤く輝き寝床を照らしていた。
経好が細く白い絹の帯を取り出した。
「これで鶴の手足を縛って動けなくすれば鶴は更に感覚が鋭敏になるはず。この絹は高級で縛った痕は付かない。」
経好は、反り返った赤黒い剣のような自分自身を、手足を縛られ動けない鶴の口奥に押し込み感触を楽しんだ。鶴の口から出したそれは赤く唾液で輝いている。
鶴の胸元は勾玉のように大きく膨らんでいる。膨らみの二つの突起の先端も経好の唾液で真紅に輝き、鶴姫の茂みの奥も経好の唾液と粘液で赤く宝珠のように丸く光っている。
結婚の儀以来、二人の肉体の三つの赤い輝きは二人を絶頂に導いている。
鶴姫は痙攣させ指先を硬直させ、縛られた手首でわずかに動く左指でスマホをなぞっている。
スマホの画面の左指がタイムリープのアイコン辺りを滑っている。
甘美で淫靡な喘ぎ声のあと、鶴姫は体をぐったりさせて、譫言を言っている。
「ここはどこ。天井に大理石のような緻密な縞状の文様が、めまいが」
鶴姫が更にうなされている。そして鶴姫の目が開いた。
「殿、体がふわりと浮いてどこかに遠くのところに飛んで行ったような気がしました」
「気を遣ったのか、そうか」
「息苦しさの中でも額も胸も熱くなり心地よい気分になりました。
どこか遠い昔に居たところに戻ったような感覚でした。年も十歳ほど若返った私は美都留という名前で呼ばれていて洋風の布団に寝ていました。
近くには殿に似た吉川という名の男性が立っておりました」
「吉川か。私の昔の名であるが。まあ気のせいだろう」
「吉川様だったのですね」
「そうだ。」
「私は経好様とずっと一緒におります。決して遠くには行きません」
鶴姫は令和の記憶を遠い昔のように封印し、経好に抱きついた。
「私は経好様とずっと一緒におります。決して遠くには行きません」
鶴姫は令和の記憶を遠い昔のように封印し、経好に抱きついた。
経好様の前の苗字は吉川だったのね。
そう呟いた鶴姫は、今日も殿の赤龍の宝である赤黒く輝く男性自身を感じて、閨で幸せそうな笑顔を見せていた。
その後鶴姫は、大好きなイケメン大名と幸せな結婚生活を送り、子供も授かって楽しく暮らした。
完
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