上 下
9 / 31

第九話

しおりを挟む
「鶴姫様が入ります。」
鶴姫は、女中頭に付いて、イケメン大名の部屋に入った。
「これは、先ほどにも増して美しい姫。早く私と結婚してほしい。三種の神器を早く集めねば。」
鶴姫は頷いた。
はい、すぐにでも結婚OKです。抱いていただく準備も完了です。
と思ったが、声には出なかった。
女中頭は墨と和紙を用意した。
「殿、鶴姫様は声が出ない状況ですが、和紙と墨で文字を書くことでお話の代わりになるかと存じます。」
「そうだな。鶴姫は元が巫女だったかた、不思議な文字を使うが、私が書いた文字は理解できるか試してみる。」
経好が、筆を取り和紙に文字を書いた。
流暢な字体ね、かなりな文字数だわ。
えっと何て読めばいいのかな。これって漢文?
鶴姫は少し首を傾げた。
女中頭が助け船を出した。
「殿は声を出してお話していただければいいかと存じます。鶴姫様がもし理解できれば和紙に回答を書くはずです。
経好が話した。
「鶴姫はこの世で一番美しい姫。三種の神器を手に入れて、鶴姫を私の妻として早く契りを交わした。婚約の儀の禁足事項は知っているが、婚約の儀の初日が終わったら、今宵は閨で口吸いをして抱きしめたい。」
鶴姫が筆を取った。
アルファベットは使わないようにしないと。
OKという文字は前に通じなかったから。
#METOOもダメよね。漢字が思い出せない。
『わたしも』
鶴姫は四文字書いて、和紙を経好に見せた。
「おおっ。通じた。さよ。私の気持ちが鶴姫に通じた。
天にも上る気持ちとは此のことよ。
今宵まで待てぬ。あれも元気になってきた。」
経好は袴の間から、褌をチラリと出した。
鶴姫が褌からうっすらと透けてみえる膨らみを確認した。
経好様のものは、結構な大きさね。入るか心配。
鶴姫の茂みが濡れ始めていることを意識した。乳首も尖っているわ。
殿、早く強く抱きしめてください。

女中頭が諫めた。
「殿、婚約の儀の禁足事項を守って頂かないとなりません。今宵はまだ前夜祭でございますゆえ、お食事を鶴姫様と取って頂き、鶴姫様のお美しいお姿を目に焼き付けていただきますが、今宵の閨は別々でございます。
明日の婚約の儀に再び鶴姫様をお連れ致します。」

一汁一菜の簡素な食事だったが、鶴姫はお腹が空いていたので、人目も気にせず、ご飯も大盛りを三杯ぺろりと平らげた。
「これは鶴姫、食べ方も豪快よ。さすが、私の正妻になる姫。
そういえば、先日、大内の軍船が私の船に襲い掛かってきて私の軍があやうくやられそうになった時を思い出した。
もうこれまでかと観念した矢先、特大三島神社のほうから一艘の船がやってきたのが見えた。
先頭に巫女姿で胴に鎧をつけた勇ましい女性が、手に何かをもって天にかざして祈ると、雷鳴と強風と大雨が一度にやってきた。
まるで嵐をつかさどる海の竜神が大内の軍船だけに襲い掛かったようだった。
大内の軍船は走行不能になり、からくも退却して我々の船から退却していったのは豪快で勇敢だった。今の食べ方でその豪快でかつ勇敢さを思い出した。
あの時の礼をしていなかった。改めて礼を言う。」

鶴姫は全く覚えていなかった。私が転生する前の巫女の鶴姫には何か不思議な力が宿っていたようね。
今の私にもそのチート能力が残っているのかしら。

「殿、鶴姫様、名残惜しいと存じますが、今宵はこれにて鶴姫様を控室にお連れします。明日の昼過ぎに婚約の儀として鶴姫様を広間にお連れします。」
離れたくなかった。こんな気持ちになったのは久しぶり。これが恋なのかも。アラサーだって恋していいはずよ。
鶴姫は再び筆を取った
『経好様好き』
愛という漢字が思いだせなかった。残念。
「おおっ。これは私も愛しているぞ。明日は必ず抱きしめるからな。」

鶴姫は女中たちに案内され、樽の湯船のある控室に戻った。
殿の部屋から和紙と筆をもってきたので女中たちに書いて見せた。
『巫女のときの私が持っていた持ち物や衣服は、ありますか。』
私より少し若そうな女中が、「私が預かっております。今お持ちします。」
みよ、早く鶴姫様にお渡ししなさい。
女中頭が、みよと言った女中が小走りに部屋を出ていき、巫女の衣装と衣装の中に入っていた持ち物を持って戻ってきた。
女中頭が鶴姫に声をかけた。
「明日は朝食をお持ちするまでここでお休みください。お食事のあと、また湯船と化粧をさせていただきます。私たち女中は隣の女中部屋に待機しております。
何かご座いましたら女中部屋の扉をたたいてお呼びください。」

鶴姫が頷くと、女中たちは引き上げていった。
持ち物を確認したあと、その日は疲れていたのか鶴姫は寝床に横たわるとすぐに意識を失った。

「鶴姫様 朝でございます。朝食をお持ちしました。」
一番幼い女中の、はなの声だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。 2024年4月21日 公開 2024年4月21日 完結 ☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。 しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。 しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。 「僕と付き合って!」 そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。 「俺とアイツ、どっちが好きなの?」 兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。 それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。 世奈が恋人として選ぶのは……どっち?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...