夏休みの山奥に洋館でタイムスリップしたら、死体が転がってた。

lavie800

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第九話

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洋館の一階に美鶴と早月は滝と共に降りると、女流棋士もアマ女流も、胡散臭い髭面のトレジャーハンターも広場の隅でひそひそ話をしているようだった。
美鶴たちは、広場の隅にいる3人には話しかけることもせず、洋館の扉を開けた。小雨模様になっていた空は、また土砂降りに戻り強い雨音が耳に降り注ぐ。
扉の向こうに衛星アンテナらしきものがある車が見えた。
「さあ、この携帯が繋がるかしら」
美鶴はそう言うと、傘も雨具も着けず滝や早月よりも早く車に向かって走っていった。
薄着の美鶴は早月の手を取ると滝に負けないように駆け出した。
早月は鼓動が高まるのを感じながら美鶴の手をしっかりと握り返して美鶴に遅れないように付いて行った。

滝が美鶴を追い越すと、車のエンジンキーを車のドアの鍵穴に入れた。
車の反対のドアから、美鶴と美鶴に引っ張られた早月も車に乗り込んだ。

滝は運転席に座るとキーを回し始めた。
助手席には美鶴が座り込み、助手席と車のドアの狭い隙間に早月も乗り込んだ。
美鶴の背中と早月の胸板が助手席でほぼ密着している。
早月は見ないようにしているが、美鶴の背中が雨に濡れて素肌が透けて見える。

『着けていない』
普通なら美鶴の乳房を覆っているブラジャーが無く、上半身の背中は素肌が透けて見える。
良からぬことを考えないようにしないと。

美鶴は上半身を捻り、手にした携帯電話を早月の方に向けた。美鶴の胸は、両腕があり透き通っているかどうかはわからない。
何を考えている。こんな時に。

美鶴の声がしたので自分の意識を取り戻した。

「ほら、携帯のWiFiにアンテナマークが着いたわ」

滝もパーキングギアのまま、運転席でアクセルを吹かしながら美鶴に話しかけてくる。
「何処かに繋がりそうなのか。WiFiだけではなく電話もできるのか」

美鶴は、どこかに電話してスピーカーモードにしてみたが話し中のままだった。
別の番号に変えてみたが同じように話し中だった。

「話し中なのかわからない。知り合いや所轄の警察の番号も試したけれど繋がらないわ。

通話がだめでもサイトがみられるかも。試してみるね。

WEBサイトも文字化けしているわ。
ここもあそこもだめ。
うっ、このサイトは何とか文字が読めるわ。スゴく重いサイトだけれど。

ここのニュースサイトの記事がでてくるわ。
記事の日付は2024年8月。
東京のトップニュースは、これよ」

『高校の将棋部合宿に出かけると言っていた高校生男女四人と、将棋部の顧問合わせて5名が山中で行方不明。合宿が終わる日の夕方頃に高校に戻らず、警察は近くの山中を懸命に捜索している。ヘリコプターで上空からも捜索中。24時間が経過して、安否が気遣われる』

滝が唸った「君たちは2024年から来たのか。そして、その時の顧問というのはひょっとしたら私なのか?」

「今の私達がいる2000年から2024年に電話しても通じない。ただ、この衛星携帯電話で2024年のニュースサイトにはアクセスできるようぬ。」

早月はふと思いついて美鶴に話しかける。
「電話が駄目でも、SNSやメールで2024年でもいいからコンタクト取れないか?」

「やってみるわ。あっ、WiFiのアンテナが消えそう」
美鶴は早月の方に上半身を早月に向けて両腕を早月と美鶴の双方を動画モードで写しているようだ。

早月は恐る恐る美鶴の上半身を前から目を薄めて確認すると、薄着の上着であるが車内で雨が乾き、上半身は透けて見えないようになっていた。ただ透けてはいないが上半身の美しそうな丸みと突起は仄かに上着の全面から伝わってくるような気がした。

「何処向いているのよ。さっきから変よ。今は緊急事態なんだから携帯に集中して」

美鶴の声を聞いて早月も携帯画面に集中した。
「SNSで、早月と私のショート動画をアップしてみたわ。知っている人がいたら返事ください。SOSと書いてアップしてみたわ。それと片っ端から高校の知り合いにこのショート動画を添付ファイルにしてメールで送ってみたわ」


滝は、美鶴と早月には目もくれず前を見ていた。
「ガソリンが残り少ないが車のアンテナを稼働させるためにはエンジンを蒸かし続けるか、車を走らせないといけないようた。ゆっくりガソリンを消費しないよう車を動かしてみるかのう」

滝はゆっくりと車を動かして洋館から離れていく。落ちた吊り橋付近まで車が近づいている。吊り橋のこちらと向こう岸にも小さなアンテナがあった。
美鶴は携帯電話を操作しながらぼんやりとそのアンテナを眺めている。


しばらくたったが、美鶴の携帯では、先ほどSNSやメールは全てアップロードエラーや送信エラーが返ってきて、返信も無かったようだ。

「どうやら、この携帯は2024年の一部のニュースサイトや記事にはアクセスができるようだけれど、2024年の知り合いに通話発信しようとすると、時代のタイムラグがあるせいなのか何故か通じないようね」
美鶴はそう言うと、いきなり早月の体を押して、助手席の二人とも車のドアから土砂降りの車外に転がり出た。
美鶴に手を握られて、落ちた吊り橋にやってきた。美鶴は吊り橋の手前のアンテナをじっくりと眺めていた。
早月は、美鶴が川に落ちないようにしっかりと手を握りしめていた。

どうしたんだ。

「あの吊り橋の向こう側の保養施設の看板見える?」
美鶴に問いかけられて、早月も看板を眺めた。
「前に剣道部の知り合いが、あの会社の診療所に勤めていて、診療所内部で電話を内線代わりに使っていたと聞いたことがあるよ。確か局番の12345678というふざけた電話番号だったような気がする」

美鶴は再びアンテナを凝視している。
後ろから滝が声を張り上げている。
「ガソリンが無くなりそうじゃ。一旦洋館に変えるしかなさそうだわい。」

美鶴は再び早月ね手を取ると車の助手席に向かって走り出した。

助手席に戻ると滝と早月に向かって、美鶴が叫んだ。
「そうね。あと一つだけ今から掛けてみるわ。それでダメなら一旦戻りましょう。」

美鶴が携帯を耳に当てる。スピーカーモードにしているので発信音が聞こえる。話し中の音ではない。

もしかして。

「もしもし、聞こえますか。」
美鶴が叫んだ。



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