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第七話
しおりを挟む美鶴が、吉川から顧問の手紙を奪い取ると、改めて要約した内容を口にした。
「令和から二十年前のこの洋館で、校長が不思議な状況で息絶えた。校長は何故かそうなることを知っていたから、今は私たち将棋部の顧問の弟に、事件の解決手段を伝えた。事件は私たちが解決できると」
美鶴は手紙を凝視すると吉川に尋ねた。
「手紙はこれだけ?」
「顧問に吊り橋で渡されたのはこれだけだよ」
手紙の裏が何か変よ。凸凹している感じ」
美鶴は手紙を上にして透かしたり、横から眺めたり、匂いを嗅いでいる。
美鶴は吉川の顔を見て、
「この手紙、レモンの匂いがするわ。ねえ、シャワー室にドライヤーがあったよね」
吉川が言われた通りシャワー室の隣の洗面台にあったドライヤーを美鶴に渡した。
「あぶり出しよ」
美鶴は紙の裏にドライヤーの先を当てて熱い風を送った。
「やっぱり、何か出てきた。地図のような絵と文字よ」
薄茶色にあぶり出された絵と文字を美鶴は吉川、田口、大内に見せた。
美鶴が文字を読む。
『我はサマエルの悪魔を山頂に封印。封印した金の箱が発掘されたら我は殺され地獄の終末が訪れる。
封印時に隠した3つの紋章を持つクイーンが救世主として我に代わり蘇る』
吉川と美鶴は顔を見合わせた。
吉川が絵を見ると、この洋館らしき場所とその裏の山奥の地図のようだ。印が3つある。
滝がやってきた。
「駄目じゃ。さっき落雷で停電しているせいか警察と電話もインターネットも繋がらないのじゃ。照明や最低限の電気は自家発電があるが通信は断線しているのか繋がらないのじゃ」
美鶴が滝に言った。
「試す価値があるかも知れない事があります。その前にこの洋館にいる人たちを簡単に教えてほしいのです。校長を殺めた人がいるかも知れないから」
滝が話し始めた。
「君たちは中学生だからおとなしくここで待っていたほうがいい。外部とのアイデアがあるといってもこの雨だ。洋館の下にいるおとなにまかせなさい。
洋館で首と胸に傷を受けて息絶えたのは私の兄で中学生の校長をしている。名前は、滝 音太郎。弟の私は滝 音二郎だ」
田口が名前を反復した。「タキオン タロウとタキオン ジロウ。光速を超える物質って確かタキオンだよね~」
「タキオンではなく、苗字が滝。確かに校長の兄は大学院で物理学を専攻していて博士号も取っている。校長になる前は大学で世界的権威もある不思議な研究をしていた。私は高校で、物理の教師をしていて兄ほど成績は良くない。将棋部の顧問をしていたが今年で部員が居なくなり有名無実の顧問をしている。」
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