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第五話
しおりを挟む雨から逃れられたとホッとした吉川は、洋館の入口で美鶴と田口と大内の後ろに居たが、洋館の中から男の人の誰だという声が聞こえて、腰を抜かしそうになった。
確かに髭を生やした男性が洋館の奥に居た。
「今、非常に取り込んでいる。誰だが知らないが帰ってくれ」
誰だと聞かれて、次は帰ってくれか。
また大雨の真っ只中の外に戻るのは気が進まない。
それに息絶えた人も気になる。
髭を生やした男性の更に奥から、もう一人の男性が姿を見せた。
二人ね男性は洋館の入口ドアになやってきた。
「やあ。待っていたよ。さあ、中に入ってくれんかのう」
もう一人の男性は黒髪で顔を若作りしているように見えたがが顧問の顔をしていた。顔は若いが言葉が年寄りじみている。
髭の男性が、黒髪の顧問に聞いた。
「滝、こいつらは誰なんだ」
滝と呼ばれた顧問が髭の男性に答えた。
「兄の校長の高校の学生じゃ。高校の将棋部だ。校長が夏休みの合宿でここに呼んだんじゃよ。ちょうど、アマ将棋名人や女流棋士がここに来ているじゃろう。校長が我々以外にも客人を呼んでいると昨晩言っていたではないか」
顧問は顔は若作りだが口調は年寄じみている。
「しかし、今は校長が…
それより早く警察を_」
美鶴が若い顧問に声をかけた。
「よろしくね。外は雨だし、遠慮なく中に入らせてもらうわ」
美鶴はズンズン洋館の部屋の奥に突き進んだ。
「あっ。ちょっと子どもは駄目だ」
田口、大内も会釈して美鶴に付いて行った。
吉川は洋館の入り口にはいる前後ろを振り向いて上空を眺めると空一面に渦を巻いていた緑の雲が急速に普通の灰色の雨雲に変わっていこうとしといた。洋館の緑の壁も渦のような模様がなくなり、ただの薄汚れた緑の壁になってきた。
美鶴が吉川くんと呼ぶ声が聞こえてきた。
「吉川君、奥の部屋に居たわ。
胸と首を刺された顧問に似ているけれど顧問じゃない息絶えた人よ」
「子どもは駄目だと言っただろう。滝、こいつら全員をどこかの部屋に閉じこめておいてくれ」
更に2階から女性が二人降りてきた。
一人は和装でショートカット、もう一人はワンピースに金髪に染めている女性だ。
美鶴が叫んだ。
「和服が似合う北山女流棋士だわ。それに二千年のミレニアムの正月に女性でアマ名人戦で男性の前年アマ名人を破った林田さんね」
「騒がしい。何か起きたの?」
和服の北山女流棋士が髭の男性に声をかけた。
「校長が大変なことに…
一階の奥の部屋で、大きな音がして、滝と二人で来てみたら校長が死体で見つかった。
奥の部屋はは中から鍵が掛かっていたんだ。二人でドアを体当たりをして開けたんだ」
「外とコンタクトしないと」
警察に連絡しようとしたが、携帯電話が通じない。洋館の固定電話も通じない」
「パソコンのネットは?」
「まだ試していない」
「2階の部屋のパソコンで試してみるわ」
女流棋士とアマ名人を破った女性は2階の部屋に戻っていった。
しばらくして二人の女性が一階に戻ってきた。
「駄目。通じない」
髭の男性が答えた。
「吊り橋も落ちたし、外界と今の所、コンタクトできない。この洋館にいるのは俺たちとこの中学生だけだ。
もし校長が誰かに刺されたとしたら、犯人はまだこの近くにいることになる」
外の大雨は止む気配がなく滝のような雨音が聞こえる。
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