綺麗な薔薇には棘がある。

春血暫

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 家に着くと、皐月は「うわあ!」となぜか目を輝かせた。

「ここが、せんせのお家~!」
「何ワクワクしてんの。普通の家なんやけど」

 アホくさ、と言って靴を脱ぎ、洗面所に行き、手洗い等済ます。

「テキトーに上がって」

 玄関にいる皐月に声をかけると、彼は「はい」と返事をし、タタタ、と俺のいる洗面所に来る。

「僕も手洗いうがいしたいんやけど、コップどうする?」
「食器棚から持ってくるから、待ってて」
「はい」
「返事は無駄にええな」
「伊達に刑務所生活してたわけやないからね」
「自慢気に言うなよ」

 アホか、と言って俺はタオルで手や口を拭いてから、台所に行った。
 食器棚から、コップを一つ取り出し、洗面所に行き、手を洗っている皐月の左隣にコップを置く。

「ここ、置いとくから」
「ありがと」
「……腹減っとるか?」
「それなりに」
「お前、普段何食ってたん?」

 俺の問いに、皐月は「んー?」と言いながらうがいをする。
 数回うがいを済ませ、タオルで手と口を拭いた後、ニコッと笑う。

「残飯やな」
「誰の」
「誰かしらの」
「きちゃな」
「そんなもんやで」

 やから、と皐月は俺を見る。

「どんな料理も美味しく感じるから、せんせの得意料理食べたい」
「……出前取りたかったんやけど」
「それならそれで」
「苦手なもんは? アレルギーとか」
「特にないけど、甘いのは苦手。あとお酒と珈琲も苦手やなぁ」
「そうなんや」

 了解、と言って俺は台所に向かう。
 皐月は俺の後ろをついてきた。
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