綺麗な薔薇には棘がある。

scene010

22

――よし。

　考えにもオチがついたし、と俺は隣にいる皐月に聞こえるよう「さて」と言って、立ち上がる。

「そろそろ休憩は終わりや。行くよ」
「僕、どこにも行く場所ないんやけど」
「うちは嫌なん？」
「嫌やないけど」
「なら、ええやん」

　ほら、と俺は皐月に手を差し出す。
　うん、と皐月には頷き、俺の手を取り、立ち上がる。

「お世話なります」
「ん」

　俺は頷き、ふらつく皐月を支えて歩く。

　細い路地を抜け、倒れている安藤のいるところに戻った。
　ふと見ると、彼女は無惨な姿で仰向けになっている。

「晒す形のままやと可哀想やな」

　さすがに、と言う俺に、皐月は「？」と小首を傾げる。

「何かするん？」
「うん、まあ」

　ここで待ってて、と俺は皐月に言い、彼から離れた。