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俺のことは放っていけ。逃げてくれ。
そう伝えようとしたが、皐月は真剣な顔で俺を連れて行こうとした。
しかし「待って!」と安藤に言われ、止められた。
安藤はなぜか怒ってるような顔で俺と皐月を見る。
「動かんといて! 今度は心臓を撃つわ」
先ほどよりも、震える手で彼女は皐月に銃口を向ける。
「私はあなたのことを尊敬してる。あなたは私の憧れなの! やから、認めて! 私の殺人は美しいと!」
「きしょ」
思わず声が出た。
これは、皐月に向けられた言葉なのに。
それでも、つい。
しかし、出てしまったものは仕方ない、と俺は続ける。
「どこが美しいんよ、あんなん。汚いわ」
「あんたなんかには判らんわ! 私は――」
「最初から、皐月を殺すつもりやったんやろ? 安藤紗奈」
「!」
「皐月に兄貴殺された、その復讐やろ。ついでに、自分の親友の仇を討っていた」
彼女に言った後、俺は皐月を見る。
「俺のこと気に入っとる今のこいつなら、簡単に殺せると思てたんやろ。舐められたもんやね、皐月」
「はぁ……」
皐月は、俺の言葉の意味を理解できていなかった。
だが、今はそんなことに構っていられない。
だから、俺は安藤に向かって話を続ける。
「言うておくけど、あんたの兄貴は皐月がなんもせんくても病死してた」
「そんなわけない!」
私は! と安藤は興味のない身の上話をしだした。
――これはチャンス。
そう思い、俺は皐月に小声で言う。
「今から三数える。それ終わったら、すぐそこの路地に入れ」
そう言って俺が指したのは人一人通れるかどうかという細い路地。
皐月は小首を傾げ、俺に訊く。
「なんで?」
「ボクはキミを守りたい。そのために、ここに来たようなもんやから」
「……惚れるよ」
「ええよ」
俺は皐月に言った後、安藤を見る。
そして、皐月にしか聞こえないような小声で三つ数えた。
俺の「三」に合わせ、皐月は俺が指した細い路地に向かって、右足を引きずりながら走った。
そう伝えようとしたが、皐月は真剣な顔で俺を連れて行こうとした。
しかし「待って!」と安藤に言われ、止められた。
安藤はなぜか怒ってるような顔で俺と皐月を見る。
「動かんといて! 今度は心臓を撃つわ」
先ほどよりも、震える手で彼女は皐月に銃口を向ける。
「私はあなたのことを尊敬してる。あなたは私の憧れなの! やから、認めて! 私の殺人は美しいと!」
「きしょ」
思わず声が出た。
これは、皐月に向けられた言葉なのに。
それでも、つい。
しかし、出てしまったものは仕方ない、と俺は続ける。
「どこが美しいんよ、あんなん。汚いわ」
「あんたなんかには判らんわ! 私は――」
「最初から、皐月を殺すつもりやったんやろ? 安藤紗奈」
「!」
「皐月に兄貴殺された、その復讐やろ。ついでに、自分の親友の仇を討っていた」
彼女に言った後、俺は皐月を見る。
「俺のこと気に入っとる今のこいつなら、簡単に殺せると思てたんやろ。舐められたもんやね、皐月」
「はぁ……」
皐月は、俺の言葉の意味を理解できていなかった。
だが、今はそんなことに構っていられない。
だから、俺は安藤に向かって話を続ける。
「言うておくけど、あんたの兄貴は皐月がなんもせんくても病死してた」
「そんなわけない!」
私は! と安藤は興味のない身の上話をしだした。
――これはチャンス。
そう思い、俺は皐月に小声で言う。
「今から三数える。それ終わったら、すぐそこの路地に入れ」
そう言って俺が指したのは人一人通れるかどうかという細い路地。
皐月は小首を傾げ、俺に訊く。
「なんで?」
「ボクはキミを守りたい。そのために、ここに来たようなもんやから」
「……惚れるよ」
「ええよ」
俺は皐月に言った後、安藤を見る。
そして、皐月にしか聞こえないような小声で三つ数えた。
俺の「三」に合わせ、皐月は俺が指した細い路地に向かって、右足を引きずりながら走った。
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