綺麗な薔薇には棘がある。

春血暫

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　保川さんと別れ、皐月の元に向かっている途中。
　ふと腕時計を見ると、九時前だった。

――だいぶ時間食っちまった。

　急がないと、と走ろうとしたとき。
　通りの向こうに、皐月らしき影が見えた。
　格好は違うが、一瞬見えた目。
　漂うオーラが、皐月だった。

――でもあいつは……。

　刑務所にいるはず。
　でも、何かで外に出させられたりしてたら？
　安藤の待つ場所に来るよう言われ、向かってる途中だとしたら？

「安藤を探さな……」

　立ち止まり、周りを見る。
　が、安藤らしき姿は見つからなかった。

――もし最後まであいつがこの殺り方を貫くなら。

　奴がいる場所は、決まっている。
　なら、皐月もそこに向かうだろう。

「行くか」

　ため息を吐き、俺は向かった。
　一連の殺人事件の現場に。

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