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そのとき、一瞬だが、彼女がニヤリと笑ったのが見えた。
――まさか。
いや、そんなことはないか。
「……でも」
今まで色々な犯罪者の話を聞いてきた。
だから、不安でしかなかった。
「如月せんせ……」
無事でいてくれ、と祈り、大人しくしている、なんてことはできなかった。
そこまで僕は大人ではない。
少し開いたドアの隙間から、男の刑務官が通りすぎるのが見えた。
僕は呼んだりせず、じっと隙間から彼を見る。
彼は僕の視線に気づき、僕を見て訊く。
「なんでここ開いてんねん」
「さっき来た女の刑務官が閉め忘れたんです。代わりに閉めてくれへん?」
「はぁ……」
しゃーない、と彼はドアに近づき、ハッとした顔で僕を見る。
「女の刑務官て……言うたか?」
「ええ」
「ほんまか?」
「何?」
「……ここは男しか入れんようにしとるし、この刑務所の刑務官は男限定や」
「……え?」
「女の刑務官はおらんはず」
「…………」
「俺はすぐに警察に連絡する。お前はここに大人しくしてろ」
そう言って走り去ろうとする彼を「待って」と僕は呼び止める。
「連絡するんやったら、どんな特徴か知っといた方がええと思いますけど」
「確かに。それはどんな女やった?」
「口頭で説明するより、絵にした方が解りやすいと思うんで」
こっちええですか? と僕は彼を手招きする。
ああ、と彼は僕に近寄る。
僕の手が届く距離に来たとき、僕は彼の首に腕を回す。
「悪い、これは僕が直接なんとかしたい話なんよ」
「お前っ」
「ほんの少しだけ、僕の代わりにここで休んでて」
じゃ、と僕は締め上げ、彼を気絶させた。
気絶した彼の制服を借り、僕はドアの向こうへと走り、そのまま刑務所から出た。
――まさか。
いや、そんなことはないか。
「……でも」
今まで色々な犯罪者の話を聞いてきた。
だから、不安でしかなかった。
「如月せんせ……」
無事でいてくれ、と祈り、大人しくしている、なんてことはできなかった。
そこまで僕は大人ではない。
少し開いたドアの隙間から、男の刑務官が通りすぎるのが見えた。
僕は呼んだりせず、じっと隙間から彼を見る。
彼は僕の視線に気づき、僕を見て訊く。
「なんでここ開いてんねん」
「さっき来た女の刑務官が閉め忘れたんです。代わりに閉めてくれへん?」
「はぁ……」
しゃーない、と彼はドアに近づき、ハッとした顔で僕を見る。
「女の刑務官て……言うたか?」
「ええ」
「ほんまか?」
「何?」
「……ここは男しか入れんようにしとるし、この刑務所の刑務官は男限定や」
「……え?」
「女の刑務官はおらんはず」
「…………」
「俺はすぐに警察に連絡する。お前はここに大人しくしてろ」
そう言って走り去ろうとする彼を「待って」と僕は呼び止める。
「連絡するんやったら、どんな特徴か知っといた方がええと思いますけど」
「確かに。それはどんな女やった?」
「口頭で説明するより、絵にした方が解りやすいと思うんで」
こっちええですか? と僕は彼を手招きする。
ああ、と彼は僕に近寄る。
僕の手が届く距離に来たとき、僕は彼の首に腕を回す。
「悪い、これは僕が直接なんとかしたい話なんよ」
「お前っ」
「ほんの少しだけ、僕の代わりにここで休んでて」
じゃ、と僕は締め上げ、彼を気絶させた。
気絶した彼の制服を借り、僕はドアの向こうへと走り、そのまま刑務所から出た。
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