綺麗な薔薇には棘がある。

春血暫

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 ドアノブに手をかけ去ろうとする彼女に、僕は「そういえば」と話しかける。

「なんで詐欺師を殺したんですか?」
「……なんのことですか」
「今警察が必死こいて捜査しとる連続殺人事件のこと。犯人、あんたやろ?」
「証拠は?」
「被害者の共通点は男前で高収入。あとは結婚詐欺師で、ここに収容されてはった。彼らのこと見てたんはあんたや。犯人やなくても、事件に関わっとるのは間違いないと思うんやけど」
「……」
「それでも、なんも言わんなら、決定的なんを言いましょか?」

 僕の台詞に、彼女は振り向き、ニコッと笑う。

「全部知ってるんですね」
「僕なりに調べたりしたから」

 とはいえ、決定的な証拠はまだ見つかっていない。
 けど、この感じ、彼女からの自白がありそうで助かる。
 まだ油断はできないけど。

「刑務官が囚人を殺すなんて、囚人である僕からしたら恐ろしい話です」
「あなたは殺しませんよ」
「狙いは結婚詐欺師?」
「ええ。私もあなたに倣って、自分なりのルールに則り、殺ってみたんですよ。どうでしたか? 私の殺人は!」

 目を輝かせて彼女は言う。

「殺し方も決めてたんです。刺す回数も」
「……それで?」
「え?」

 彼女はキョトンとする。

「私……、凄いですよね? あなたのような殺しが……できていましたよね?」
「さあ、どうでしょ。僕は自分のしたことを客観的に見たことないですから」
「…………」
「ただ、君が僕の真似をした、てのは不快でしかない。僕をそんな目で見るのも不快やし、距離が近いのも不快」
「……私は、あなたのことが好きなのに」
「そう。でも、僕は君のことが好きやないし、全く興味ない」
「……全部、如月のせいやね」

 彼女は呟き、ドアの向こうへと姿を消した。
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