綺麗な薔薇には棘がある。

春血暫

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「はい?」

 俺が電話に出ると、石野さんは『良かった、繋がったわ』とホッとしたような声を出す。

『仕事、お疲れ様。吉原さんが梟帥に話あるんやって』
「あ、仕事頼んでたんやった」
『それなら連絡先くらい交換しとき』
「うっかり……」
『ったく。吉原さんに代わるね』
「はい」

 そういえば、連絡先は石野さんとオカンと知り合いの刑事にしか教えていない。

 ついつい忘れてしまう。
 どうせ次は会わんだろ、とか思って。

『如月さん? 今、平気ですか?』
「平気です」
『如月さんにお願いされてた件なんですが、一人いましたよ』
「ほんまですか?」
『ええ。安藤あんどう紗奈さな、二十八歳。皐月慧亮のおる刑務所の刑務官です』
「ほう」
『安藤について、今、仁田ちゃんが詳しく調べてます。が、恐らくこいつが犯人やと思いますよ』
「というと?」
『被害者全員との関係者でもあるんです』
「……なるほど」
『また何かあったら連絡します』
「お願いします」

 それでは、と電話を切った。
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