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刑務所を出て、守真署に連絡しようと携帯を取り出したとき。
前から「如月さん?」と聞き覚えがありそうな声がした。
見ると、そこには以前、石野さんの喫茶店で会った刑事――吉原さんがいた。
「ああ、吉原さん。どうも」
俺が軽く会釈をすると、吉原さんも会釈する。
「どうも。てか、こんなとこで何を?」
「知り合いがおるんで面会を」
「へえ」
「吉原さんは?」
「仁田ちゃんと二人でとある囚人の話を聞くことになってん」
「……皐月慧亮、ですか?」
「ええ、そうです。けど、どうして?」
「有名人やから、私でも知ってます」
「ああ」
なるほどなぁ、と吉原さんは頷く。
「ものっっそい凶悪犯ですからね」
「……ええ」
「? 如月さん?」
「あ、いや、凶悪犯と普通の犯人て違いなんてあるんかなぁ、て」
「?」
「同じように罪を犯した人間やのに、凶悪犯てゆうと特別な存在みたいに聞こえませんか?」
「ああ、言われてみれば」
「罪を犯した人間も、それを裁く人間も、見守る人間も、無視する人間も、全員同じ人間やのに」
特別視してしまう、凶悪犯なんていうと。
皐月は、目的があり、その目的を果たす手段が殺人しかなかったから、それをしただけの人間だ。
あいつが人の心臓が好きで抉り取ったりしたのは、一般的には異常に見えるかもしれない。
でも、そんなことない。
普通のことだ。
「マスコミ的には、特別な感じで報道したら、客に興味持ってもらえるやろ、てのでそうした――あ?」
特別。
今回の連続殺人事件も、特別なように見えた。
そういう風に報道されていたから。
皐月と同じだ。
「吉原さん……、一つお願いできますか?」
俺は真っ直ぐ吉原さんを見る。
「刑事であるあなたや仁田さんやないと、できひんことなんです」
「え? ええけど……」
「皐月慧亮と接触したことのある女を調べてください」
「? なんで?」
「そん中に犯人がおるからです」
「え?」
「よろしくお願いします!」
それでは、と俺は急いで自分の仕事場に向かった。
前から「如月さん?」と聞き覚えがありそうな声がした。
見ると、そこには以前、石野さんの喫茶店で会った刑事――吉原さんがいた。
「ああ、吉原さん。どうも」
俺が軽く会釈をすると、吉原さんも会釈する。
「どうも。てか、こんなとこで何を?」
「知り合いがおるんで面会を」
「へえ」
「吉原さんは?」
「仁田ちゃんと二人でとある囚人の話を聞くことになってん」
「……皐月慧亮、ですか?」
「ええ、そうです。けど、どうして?」
「有名人やから、私でも知ってます」
「ああ」
なるほどなぁ、と吉原さんは頷く。
「ものっっそい凶悪犯ですからね」
「……ええ」
「? 如月さん?」
「あ、いや、凶悪犯と普通の犯人て違いなんてあるんかなぁ、て」
「?」
「同じように罪を犯した人間やのに、凶悪犯てゆうと特別な存在みたいに聞こえませんか?」
「ああ、言われてみれば」
「罪を犯した人間も、それを裁く人間も、見守る人間も、無視する人間も、全員同じ人間やのに」
特別視してしまう、凶悪犯なんていうと。
皐月は、目的があり、その目的を果たす手段が殺人しかなかったから、それをしただけの人間だ。
あいつが人の心臓が好きで抉り取ったりしたのは、一般的には異常に見えるかもしれない。
でも、そんなことない。
普通のことだ。
「マスコミ的には、特別な感じで報道したら、客に興味持ってもらえるやろ、てのでそうした――あ?」
特別。
今回の連続殺人事件も、特別なように見えた。
そういう風に報道されていたから。
皐月と同じだ。
「吉原さん……、一つお願いできますか?」
俺は真っ直ぐ吉原さんを見る。
「刑事であるあなたや仁田さんやないと、できひんことなんです」
「え? ええけど……」
「皐月慧亮と接触したことのある女を調べてください」
「? なんで?」
「そん中に犯人がおるからです」
「え?」
「よろしくお願いします!」
それでは、と俺は急いで自分の仕事場に向かった。
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