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「常に成績トップである梟帥のことを、明朗は良く思えへんかったんです。成績が悪かった自分に対する当て付けにしか思えへん、とたまに愚痴を溢してました。そんな感じやったから、よぅ喧嘩してたんです。その喧嘩を止めようとした一愛ちゃんに、明朗の怒りの矛先は向き、夫婦喧嘩が絶えんかった」
ふぅ、と先生の伯父は一息吐き、僕を見る。
「それがずっと続いてたんですよ。それのピークは梟帥が高校三年生の頃。あいつが医学部に進学したい、と言うて勉強してた頃です。一般家庭から医学部なんて学費が大変やから、とあいつは特待生になるべく、たくさん勉強してました」
「……立派ですね」
「俺も思います。ただ……、それが明朗にとっては不快やったんですよ。自分にできんことをやってのける梟帥のことが」
「…………」
「事件のあった日。それは梟帥の模試の結果が家に届く日でした。初めて志望校にA判定がつき、梟帥は嬉しくなり、両親に報告したんです。夕飯の後に。それで、明朗は怒り、二人に暴力を振るった後、ハッとし、冷静になるために外に出たんです。梟帥はすぐに追いかけ――」
「それで、駅のホームから突き落とした、て話ですか?」
「言い合いの末に、も付け足しておいてください」
先生の伯父はまた一息吐く。
「劣等感てのは、ほんまに厄介ですし、呪いですよ」
「そうですか?」
「そうですよ。それがなければ、それなりに家族てのをやれたんやないかな、と俺は個人的に思います」
「……僕には解らへん話です」
はぁ、とため息を吐き、僕は先生の伯父に言う。
「思てた話とは少しちゃう話で、ガッカリです」
「そう?」
「如月せんせは、もっと頭おかしい人かなぁ、て。今の話やと、ほんまに事故にしか思えへん」
運が悪かった。
その一言に尽きる。
「運悪く人殺しになってもうた悲劇のヒロイン、て感じ」
あーあ、と僕は背筋を伸ばし、少し欠伸をする。
「つまらんわ」
「そうやね。でも、明朗はあの日、駅やなくても梟帥に殺されてたんですよ」
確実にね、と先生の伯父は呟くように言った。
ふぅ、と先生の伯父は一息吐き、僕を見る。
「それがずっと続いてたんですよ。それのピークは梟帥が高校三年生の頃。あいつが医学部に進学したい、と言うて勉強してた頃です。一般家庭から医学部なんて学費が大変やから、とあいつは特待生になるべく、たくさん勉強してました」
「……立派ですね」
「俺も思います。ただ……、それが明朗にとっては不快やったんですよ。自分にできんことをやってのける梟帥のことが」
「…………」
「事件のあった日。それは梟帥の模試の結果が家に届く日でした。初めて志望校にA判定がつき、梟帥は嬉しくなり、両親に報告したんです。夕飯の後に。それで、明朗は怒り、二人に暴力を振るった後、ハッとし、冷静になるために外に出たんです。梟帥はすぐに追いかけ――」
「それで、駅のホームから突き落とした、て話ですか?」
「言い合いの末に、も付け足しておいてください」
先生の伯父はまた一息吐く。
「劣等感てのは、ほんまに厄介ですし、呪いですよ」
「そうですか?」
「そうですよ。それがなければ、それなりに家族てのをやれたんやないかな、と俺は個人的に思います」
「……僕には解らへん話です」
はぁ、とため息を吐き、僕は先生の伯父に言う。
「思てた話とは少しちゃう話で、ガッカリです」
「そう?」
「如月せんせは、もっと頭おかしい人かなぁ、て。今の話やと、ほんまに事故にしか思えへん」
運が悪かった。
その一言に尽きる。
「運悪く人殺しになってもうた悲劇のヒロイン、て感じ」
あーあ、と僕は背筋を伸ばし、少し欠伸をする。
「つまらんわ」
「そうやね。でも、明朗はあの日、駅やなくても梟帥に殺されてたんですよ」
確実にね、と先生の伯父は呟くように言った。
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