綺麗な薔薇には棘がある。

春血暫

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 如月先生から、彼自身の家族の話を聞いた日。
 その日の翌日から、パタリと僕の元に来なくなった。

 最後に見た先生の顔は忘れられない。

 キョトンとした顔。
 何がなんだか全く解ってない。

 そんな顔をした後、吐き気を催したのか、口元を押さえ、僕の前から姿を消してしまった。

 先生は、何も覚えていないのだろう。
 自分が殺人を犯したことについて、記憶がないみたいだ。

 以前、先生の伯父が話していたことを思い出す。

 僕が殺した数を数えきれない、と話した後。
 先生の伯父は「そう。なら、君は梟帥よりおかしないな」と言ったのだ。

 その意味をあの時は解らなかった。
 でも、今なら解る。

 先生は、殺した記憶がない。
 人を殺しておいて、忘れるなんて酷い話だと思う。
 それも父親相手なら余計。
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