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scene006
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翌日も、彼――皐月の元に行くこととなった。
彼が俺にだけ話したいことがあると言ったらしい。
事件に関わることだ、と。
少し面倒だが、事件解決のためには仕方ない。
支度を済ませ、皐月のいる刑務所に向かった。
「――で、なんやねん」
向かったのだが、皐月はニコニコ笑ったまま、話そうとしない。
腹立つ。人を呼んどいて、なんなんだ。
「お前が俺に用ある言うから来たんやけど?」
「用あるのはほんまやで、せんせっ」
「……で? 事件について、なんかあるんやろ?」
「うん。でも、今話す気になれんわ」
「なんやねん。話す気ぃなったら呼べや」
開いたメモ帳を閉じ、帰り支度をすると「待って」と皐月は俺を止める。
「昨日、せんせは家族の話、振ったやろ?」
「それが?」
「僕は話したのに、先生は話さんかった。それが嫌」
「……」
「如月先生の家族の話、聞かせてくれたら話す」
どう? と皐月は俺を見て、ニコッと笑う。
殴りたい。
思いきり殴りたいが、ぐっと堪え、ため息を少し吐いた。
彼が俺にだけ話したいことがあると言ったらしい。
事件に関わることだ、と。
少し面倒だが、事件解決のためには仕方ない。
支度を済ませ、皐月のいる刑務所に向かった。
「――で、なんやねん」
向かったのだが、皐月はニコニコ笑ったまま、話そうとしない。
腹立つ。人を呼んどいて、なんなんだ。
「お前が俺に用ある言うから来たんやけど?」
「用あるのはほんまやで、せんせっ」
「……で? 事件について、なんかあるんやろ?」
「うん。でも、今話す気になれんわ」
「なんやねん。話す気ぃなったら呼べや」
開いたメモ帳を閉じ、帰り支度をすると「待って」と皐月は俺を止める。
「昨日、せんせは家族の話、振ったやろ?」
「それが?」
「僕は話したのに、先生は話さんかった。それが嫌」
「……」
「如月先生の家族の話、聞かせてくれたら話す」
どう? と皐月は俺を見て、ニコッと笑う。
殴りたい。
思いきり殴りたいが、ぐっと堪え、ため息を少し吐いた。
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