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scene006
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家族の話を振ったのは、なんとなくだった。
勿論、彼にも家族がいることくらい解っていた。
だが、家族という概念のようなものを聞かれて、驚いてしまった。
驚く俺に、彼は思い出したかのように話す。
以前も、同じ質問をされた際に、そう答えたら驚かれた、と。
それはそうである。
家族というのは当たり前にあり、何も考えなくても傍にいるものらしいから。
らしい、というと変かもしれないが。
正直な話をすると、俺にもあまり解らない。
だから、彼に家族がいるのか聞かれた際、何も答えることができなかった。
それでも、周りがよく言う家族についての定義のようなものを、彼に向けて話した。
――一緒にいて落ち着く、とか――
――一緒にいたい、とか。いてほしい、とか――
――そういうのも感じたりするてのも――
――家族なんちゃうかな――
自分で言っておいてなんだが、あまりしっくりこない。
そうらしい、という曖昧なものだ。
だから「しらんけど」と言って、話を終わらせようとした。
自分で話を振っておいて、振られて答えられないから、勝手に切り上げる。
ちょっと失礼だったか、と思う自分に、少し驚いた。
「変やな……」
そんなこと、あまり気にしなかったのに。
彼が熱っぽく見え、少し心配したのも不思議だ。
俺と彼は、ただの他人なのに。
――なんなんやろ。
それも、彼と話せば解るのか。
さらに解らなくなるのか。
どうなるのか見当がつかない。
けど、嫌悪感などは感じず、少し楽しみに感じた。
勿論、彼にも家族がいることくらい解っていた。
だが、家族という概念のようなものを聞かれて、驚いてしまった。
驚く俺に、彼は思い出したかのように話す。
以前も、同じ質問をされた際に、そう答えたら驚かれた、と。
それはそうである。
家族というのは当たり前にあり、何も考えなくても傍にいるものらしいから。
らしい、というと変かもしれないが。
正直な話をすると、俺にもあまり解らない。
だから、彼に家族がいるのか聞かれた際、何も答えることができなかった。
それでも、周りがよく言う家族についての定義のようなものを、彼に向けて話した。
――一緒にいて落ち着く、とか――
――一緒にいたい、とか。いてほしい、とか――
――そういうのも感じたりするてのも――
――家族なんちゃうかな――
自分で言っておいてなんだが、あまりしっくりこない。
そうらしい、という曖昧なものだ。
だから「しらんけど」と言って、話を終わらせようとした。
自分で話を振っておいて、振られて答えられないから、勝手に切り上げる。
ちょっと失礼だったか、と思う自分に、少し驚いた。
「変やな……」
そんなこと、あまり気にしなかったのに。
彼が熱っぽく見え、少し心配したのも不思議だ。
俺と彼は、ただの他人なのに。
――なんなんやろ。
それも、彼と話せば解るのか。
さらに解らなくなるのか。
どうなるのか見当がつかない。
けど、嫌悪感などは感じず、少し楽しみに感じた。
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