綺麗な薔薇には棘がある。

春血暫

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 すると、先生の伯父が「あはは」と笑い、僕を見る。

「そんな嬉しいん? 梟帥に気に入られとることが」
「え? ああ、まあ。僕も彼のこと気に入っとるから」
「そう」
「……せんせは、えらい優しい人やと思います」
「そう?」
「表向きは」
「ああ、そうやな」

 先生の伯父は苦笑する。

「あいつは自覚なしなんやけど、他人と違っとって。みんな、あいつの表向きが本心やと思って、期待してしまうんや」
「せんせの叔父――えっと、石野さん? は、気づいとったん? せんせがおかしいってゆうの」
「気づいてたよ。あいつの異常性には」
「…………」

 先生の伯父も気づくくらい、はっきりとわかりやすく、彼はおかしい。
 それでも、自覚なしというのは。
 もしかしたら、本当に僕よりもおかしいのかもしれない。

――余計、もっと知りたなったわ。

 そう思い、色々と先生の伯父に訊こうとすると。
 先生の伯父は「さてと」と言い、帰ろうとする。

「僕はそろそろ店に戻らなあかんから、もう行くわ」
「店?」
「カフェやってんねん。コーヒーはお好き?」
「いや、全く。酒と同じくらい嫌いや」
「そう」

 そりゃ残念やな、と笑って先生の伯父は僕の前から去ろうとする。
 僕に背を向け、数歩歩いたところで「あ」と言い、僕の方を見る。

「君は何人の人を殺した?」
「え? まあ、数えきれへんくらい……だけど」
「そう。なら、君は梟帥よりおかしないな」
 じゃ、と先生の伯父は僕に軽く手を振って去っていった。
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