狂気醜行

狂気醜行

004

　文弘はそれを見て、少し深めにため息を吐いた。
――一段落ついた。
　そう思っていると、理緒が文弘を呼ぶ。
「こっちに来てください、先生！」
「ん？　何だよ」
「僕が呼んだ二人が眠らされているんです」
「じゃあ、今のは？」
「……偽者かもしれません」
「やられた」
　文弘は舌打ちをする。
「逃げられるかもしれん」
「え」
「俺らは一個大切なことをすっかり忘れていた」
「何ですか？」
「『S教』は教祖も信者も知られていないってことだよ」
「あ」
「本物の刑事だとしても、信者の可能性があるってこった」
「くっそ」
「追うぞ。北ヶ峰、車を出せ」
「わかりました！」
　理緒はパトカーを運転し、助手席には文弘が乗って、先に出た優を乗せた車を追った。