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杜和泉少女殺害事件
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優が行ってから、文弘は理緒の部下の恵実に連絡する。
「殺人事件だ。雪城刑事」
『え? どうして私に? てか、場所はどこですか?』
「北ヶ峰は地元で調べものをしている。場所は杜和泉駅から西に向かって徒歩十分。華原書店前。被害者は天宮城愛弥。犯人は……逃がしちまった」
『わかりました。今、行きますね!』
「……俺はまた人を助けることができなかった。雪城刑事、目の前で人が死ぬのは良い気分じゃねえなあ」
『え? まあ、その目の前で死なれるのは嫌ですけど。川中先生、落ち着いてください。今、向かってます』
「後は頼んだ。俺は犯人を追うよ」
『追わないでください。先生が追ったら犯人の思う壺ですから』
「は?」
『犯人の目的は最初からきっと川中先生だったんだと思います』
恵実は走りながら電話で文弘に話す。
『きっと今回は川中先生の目の前で人を殺すのが目的だったんです』
「何だよそれ。俺のせいか」
『大きく言えばそうですね』
「否定とかしろよ」
『できません。だって、そう考えたら話がとても簡単なんです』
「…………」
『先輩から聞きました。藁谷町の事件の話。あれの日付などは知ってますか?』
「日付?」
『はい。ここで起きた『S教』関係の事件は、向こうで川中先生が起こした事件と同じ日付なんですよ。西暦までも同じ』
「そんなわけないだろ。俺はここで……」
『はい。あり得ないんです。だけど、これは事実です』
だから、と恵実は電話から離れ、文弘に言う。
「犯人――佐々塚優はその事をあなたに教えたくて事件を起こしました」
「殺人事件だ。雪城刑事」
『え? どうして私に? てか、場所はどこですか?』
「北ヶ峰は地元で調べものをしている。場所は杜和泉駅から西に向かって徒歩十分。華原書店前。被害者は天宮城愛弥。犯人は……逃がしちまった」
『わかりました。今、行きますね!』
「……俺はまた人を助けることができなかった。雪城刑事、目の前で人が死ぬのは良い気分じゃねえなあ」
『え? まあ、その目の前で死なれるのは嫌ですけど。川中先生、落ち着いてください。今、向かってます』
「後は頼んだ。俺は犯人を追うよ」
『追わないでください。先生が追ったら犯人の思う壺ですから』
「は?」
『犯人の目的は最初からきっと川中先生だったんだと思います』
恵実は走りながら電話で文弘に話す。
『きっと今回は川中先生の目の前で人を殺すのが目的だったんです』
「何だよそれ。俺のせいか」
『大きく言えばそうですね』
「否定とかしろよ」
『できません。だって、そう考えたら話がとても簡単なんです』
「…………」
『先輩から聞きました。藁谷町の事件の話。あれの日付などは知ってますか?』
「日付?」
『はい。ここで起きた『S教』関係の事件は、向こうで川中先生が起こした事件と同じ日付なんですよ。西暦までも同じ』
「そんなわけないだろ。俺はここで……」
『はい。あり得ないんです。だけど、これは事実です』
だから、と恵実は電話から離れ、文弘に言う。
「犯人――佐々塚優はその事をあなたに教えたくて事件を起こしました」
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