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生死の間の町
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由一は驚いて「え……?」と文弘を見る。
「やっぱり、て?」
「おかしいと思ったんだ。ここの住民の態度が」
「………………」
「俺は何も覚えていないし、知らないけれど。ここの住民は覚えているんだろ? 俺と佐々塚先生がしたことを」
「………………」
「まず、駅員さんが俺を見て、俺の名前を知っていて、俺がここで高校教師をしていたことを話してくれた。その次、通行人が俺を見た後は必ずと言って良いくらいビクビクしていた。最後に、佐々塚先生がここでしたことの近しい人物に俺がいた」
「僕がいない間に……全部、見たんですね……」
「いや、あんたがいたときから見て、大体を把握した。それで、詳しく調べようと思ったが。嫌だよな」
はあ、と文弘はため息を吐く。
「夢の中で、佐々塚先生に『あなたに興味があります』と言われた理由もわかった。一緒に悪をしたのに、俺は覚えていなくてさ。こうして警察側として悪を裁こうとしている。どういう神経してるんだ? となるな」
「いや、それは――」
「そうだろ? 遠慮とかしないで言ってくれ。されるの嫌なんだよ」
「…………」
「なあ、南条。俺は帰るよ。ここで調べたいことは北ヶ峰に任せた。すまなかった」
じゃあな、と文弘は玄関の方に行く。
「色々知れて良かったよ。これで佐々塚さんを逮捕するのに一歩くらい進めた気がする」
「逮捕……?」
「するよ。するっつったし」
ニコッと笑い、文弘は外に出た。
「やっぱり、て?」
「おかしいと思ったんだ。ここの住民の態度が」
「………………」
「俺は何も覚えていないし、知らないけれど。ここの住民は覚えているんだろ? 俺と佐々塚先生がしたことを」
「………………」
「まず、駅員さんが俺を見て、俺の名前を知っていて、俺がここで高校教師をしていたことを話してくれた。その次、通行人が俺を見た後は必ずと言って良いくらいビクビクしていた。最後に、佐々塚先生がここでしたことの近しい人物に俺がいた」
「僕がいない間に……全部、見たんですね……」
「いや、あんたがいたときから見て、大体を把握した。それで、詳しく調べようと思ったが。嫌だよな」
はあ、と文弘はため息を吐く。
「夢の中で、佐々塚先生に『あなたに興味があります』と言われた理由もわかった。一緒に悪をしたのに、俺は覚えていなくてさ。こうして警察側として悪を裁こうとしている。どういう神経してるんだ? となるな」
「いや、それは――」
「そうだろ? 遠慮とかしないで言ってくれ。されるの嫌なんだよ」
「…………」
「なあ、南条。俺は帰るよ。ここで調べたいことは北ヶ峰に任せた。すまなかった」
じゃあな、と文弘は玄関の方に行く。
「色々知れて良かったよ。これで佐々塚さんを逮捕するのに一歩くらい進めた気がする」
「逮捕……?」
「するよ。するっつったし」
ニコッと笑い、文弘は外に出た。
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