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杜和泉絵師殺害事件
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「――ということなんです。先生」
奈穂が話すと、優は「なるほど」と言い、腕を組む。
「それは困ったな」
「ええ。見たとき、友達のお姉さんは友達にかなり執着してる感じで。独占というか、支配というか。何か怖かったんです」
「うーむ。まあ、親をなくした兄弟が兄弟に依存してしまう、という話はよく聞くから、そこはそんなに問題ではないのだけれど」
「そうなんですか?」
「そうだよ。ほら、美鶴くんがいないと、新沢くんは不安だろ?」
「それは美鶴はまだ小さいですから。一人だと危ないです」
「それと同じ。その子のお姉さんも、きっとそうだとは思うけど。問題は物事の順序かな」
優は机の上にある要らない紙にペンで図を書く。
「二人の親がなくなってから、お姉さんがその子に支配的になったのか。それとも、親がいるときからお姉さんがその子に支配的だったか」
「?」
「後者の場合は、最悪、お姉さんが自分の思い通りに妹をしたいから、という理由で親を殺した可能性がある」
「え」
「問題しかないだろ? その子からしたら、ただの恐怖だよ」
「…………」
「今の段階ではわからないけど」
ね? と、優は奈穂を見る。
奈穂は優が書いた文字や図形を見る。
「もしも後者だったら、天宮城さんが危ない」
「うぶしろ?」
「はい。その子の名字です。天上のお宮のお城で」
「変わった名字だね」
天宮城、ねえ……、と優は呟き、紙に書く。
「その天宮城さんが、もしも助けを求めたなら、俺は必ず助けるよ」
「本当ですか!?」
「ああ。俺は子供の味方だから」
「ありがとうございます! 先生に話して良かったです」
奈穂は笑って優を見る。
「千歳と二人で、先生ならきっと、て思ってたんです」
「そうか。何か嬉しいな」
「先生が嬉しいの、僕も嬉しいです」
「ん」
優は頷き、チラリと時計を見る。
「新沢くん、時間は大丈夫かい?」
「え?」
奈穂も時計を見て「あ」と言う。
「美鶴のお迎え!」
「うん。気を付けるんだよ」
「はい! ありがとうございます!」
「ん。あ、今度もしあれだったら、その天宮城さん、連れてきな」
「はい!」
それでは! と、慌てて職員室を出る奈穂を、優は笑って見送った。
奈穂が話すと、優は「なるほど」と言い、腕を組む。
「それは困ったな」
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「そうなんですか?」
「そうだよ。ほら、美鶴くんがいないと、新沢くんは不安だろ?」
「それは美鶴はまだ小さいですから。一人だと危ないです」
「それと同じ。その子のお姉さんも、きっとそうだとは思うけど。問題は物事の順序かな」
優は机の上にある要らない紙にペンで図を書く。
「二人の親がなくなってから、お姉さんがその子に支配的になったのか。それとも、親がいるときからお姉さんがその子に支配的だったか」
「?」
「後者の場合は、最悪、お姉さんが自分の思い通りに妹をしたいから、という理由で親を殺した可能性がある」
「え」
「問題しかないだろ? その子からしたら、ただの恐怖だよ」
「…………」
「今の段階ではわからないけど」
ね? と、優は奈穂を見る。
奈穂は優が書いた文字や図形を見る。
「もしも後者だったら、天宮城さんが危ない」
「うぶしろ?」
「はい。その子の名字です。天上のお宮のお城で」
「変わった名字だね」
天宮城、ねえ……、と優は呟き、紙に書く。
「その天宮城さんが、もしも助けを求めたなら、俺は必ず助けるよ」
「本当ですか!?」
「ああ。俺は子供の味方だから」
「ありがとうございます! 先生に話して良かったです」
奈穂は笑って優を見る。
「千歳と二人で、先生ならきっと、て思ってたんです」
「そうか。何か嬉しいな」
「先生が嬉しいの、僕も嬉しいです」
「ん」
優は頷き、チラリと時計を見る。
「新沢くん、時間は大丈夫かい?」
「え?」
奈穂も時計を見て「あ」と言う。
「美鶴のお迎え!」
「うん。気を付けるんだよ」
「はい! ありがとうございます!」
「ん。あ、今度もしあれだったら、その天宮城さん、連れてきな」
「はい!」
それでは! と、慌てて職員室を出る奈穂を、優は笑って見送った。
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