狂気醜行

春血暫

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写鏡の師

004

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「え? あ? はい?」
 一は驚き、何回か瞬きをする。
「どういうことですか?」
「あー、わかりやすい表現でいけば、別人格かもしれない。ごめんなさいね」
「…………」
「まあ、簡単に私のことは文弘二号とかそんな感じに思ってて。瀧代一くん」
「え、どうして俺の名前……」
「文弘からよく聞いてるから」
「……えっと、うん?」
「あまり詳しい話は、文弘がきっと嫌だと思うから言わないけど」
 そうね、と文弘――鏡は言う。
「こうして会ってしまったのも何かの縁。仲良くしましょう」
「いや、まあ、はい」
「何? まだヤろうとか言ってないじゃない。あはは」
「えっと、そのー、二号さん?」
「あー、二号って何か嫌ね。鏡って呼んで」
「かがみ?」
「英語で言うところのミラー」
「鏡……」
「はいはい」
「鏡……さんは、その、川中先生とは違ってかなり明るいですね」
「? 文弘も明るくて可愛い子よ? 私の次にだけど」
「はあ」
「冗談よ。私と同じくらい可愛い」
「えっと……」
 戸惑う一を、鏡はからかうように笑う。
「文弘が気に入るのがよくわかるくらい面白い子ね」
「え? 先生が?」
「ええ、そうよ」
 鏡は頷き、荷物を持って扉の方に行き、立ち止まる。
「帰る前に一個だけ良いかしら?」
「あ、はい」
「瀧代くんにとって、文弘はどんな存在かしら」
「川中先生は、その……。変わった人ですが、とても優しくて……。きっと、俺の恩師のような存在だと思います」
「恩師、ね」
 うんうん、と鏡は頷き、一を見る。
「文弘のこと、よろしくね」
「え? あ、はい」
「じゃあ、またどこかで会いましょう」
 鏡はそう言って、扉の向こうへ行った。
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