狂気醜行

春血暫

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写鏡の師

001

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「人が犯罪を犯す理由なんてものは、突き詰めていけば『無』だろう。あらゆる動機はあるが、それが全てではないし、本当にそうかと言われると違うからだ」
 少し広い教室で、文弘はマイク片手に講義をする。
「環境が悪いなら、環境を変えれば良い。それをすることは、非常に簡単だ。だが、それでも変わらず人が犯罪を犯すと言うなら、それは環境だけが原因ではないと言うことだ」
 文弘の言葉を、一や他の学生がノートにメモを取る。
 少しすると、終了の鐘が鳴り、文弘は「お疲れさまでした」と言う。
「質問などがあったら、今のうちに来い。俺は少し忙しいんだ」
 そう言うと、何人かの学生が文弘のところに行った。
 その内の一人である一は文弘に「また事件ですか?」と訊く。
「先生、たまには休んだ方が良いですよ」
「疲れていないのに休むって、意味がわからないな」
「……先生、端からみたら大分末期ですよ」
「そうか?」
「今日も、講義の途中で何回か吐血してたじゃないですか!」
「よく吐血をしてしまう体質なんだよ」
「何ですか、それ」
 全く、と一は文弘を少し睨む。
「今日から二週間くらい休んでください! しっかり身体を休めて」
「平気だって」
「そこそこの量の血を吐いた人が何を言ってるんですか。倒れて、死なれたら困るんですよ」
「……わかったよ。でも、事件の捜査資料とかは読むからな」
「仕事を一旦、忘れてください」
「ちぇっ」
「舌打ちしない!」
「わかったよ、もう」
 じゃあな、と文弘は自分の研究室に向かった。
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