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杜和泉児童殺害予告事件
012
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「あの!」
一は少し先を歩く文弘に声をかける。
文弘は足を止め、一を見る。
「どうかしたか?」
「えっと、先生は犯行予告は嘘だって知ってたんですか?」
「最初から変だと思っていたよ。嘘だ、とはっきりはわからんかったが」
文弘は煙草を吹かす。
「確信したのは、佐々塚先生に会ったとき。彼は佐伯少年の登校拒否を気にして来た。もしも犯行予告があるなら、それを話すだろ?」
「ああ、確かに」
「あと、学校側が何も言わないというのも変だと思っていたんだよ」
「ええ、そうですね。でも、大事にしたくないから、という理由で隠していた、とかは?」
「それもあるけど、佐伯少年は少し学習障害があるようだったからね」
「学習障害?」
「聞き取り、読み、書きがあまり得意ではないというか、できないという障害。あと、算数もあったな」
「は、はあ……」
「わかっていても、できないというものさ。まるで催眠術でもかかっているような――そんな感じ」
「…………」
「こういう類いは専門じゃねえから、上手いこと説明できん」
ま、と文弘は一に言う。
「佐伯少年には、犯行予告を出すということは不可能だという話だ。それに彼、犯行予告というものを知らないみたいだったし」
「……なるほど」
一はあまり納得できなかった。
が、具体的にどこが納得できていないか、自分でもわからなかった。
だから、何も言わず、文弘の隣まで歩いた。
一が文弘の隣に立ったとき、文弘は「あ」と言い、一を見る。
「瀧代、お前さカメラ持ってる?」
「カメラ?」
「うむ。ないならないで構わん」
「あ、いや……高校生の頃に親に買ってもらったデジカメならありますが」
「借りても良いか?」
「ええ、別に良いですけど」
一は鞄からデジカメを出し、それを文弘に渡す。
「何に使うんですか?」
「記録用~」
「記録用?」
「うむ。あ、瀧代は先に帰っていて良いぞ」
「え、あ、はい」
一は頷く。
「では、その、お疲れさまでした」
「おん」
またな、と文弘は一に手を振った。
一は少し先を歩く文弘に声をかける。
文弘は足を止め、一を見る。
「どうかしたか?」
「えっと、先生は犯行予告は嘘だって知ってたんですか?」
「最初から変だと思っていたよ。嘘だ、とはっきりはわからんかったが」
文弘は煙草を吹かす。
「確信したのは、佐々塚先生に会ったとき。彼は佐伯少年の登校拒否を気にして来た。もしも犯行予告があるなら、それを話すだろ?」
「ああ、確かに」
「あと、学校側が何も言わないというのも変だと思っていたんだよ」
「ええ、そうですね。でも、大事にしたくないから、という理由で隠していた、とかは?」
「それもあるけど、佐伯少年は少し学習障害があるようだったからね」
「学習障害?」
「聞き取り、読み、書きがあまり得意ではないというか、できないという障害。あと、算数もあったな」
「は、はあ……」
「わかっていても、できないというものさ。まるで催眠術でもかかっているような――そんな感じ」
「…………」
「こういう類いは専門じゃねえから、上手いこと説明できん」
ま、と文弘は一に言う。
「佐伯少年には、犯行予告を出すということは不可能だという話だ。それに彼、犯行予告というものを知らないみたいだったし」
「……なるほど」
一はあまり納得できなかった。
が、具体的にどこが納得できていないか、自分でもわからなかった。
だから、何も言わず、文弘の隣まで歩いた。
一が文弘の隣に立ったとき、文弘は「あ」と言い、一を見る。
「瀧代、お前さカメラ持ってる?」
「カメラ?」
「うむ。ないならないで構わん」
「あ、いや……高校生の頃に親に買ってもらったデジカメならありますが」
「借りても良いか?」
「ええ、別に良いですけど」
一は鞄からデジカメを出し、それを文弘に渡す。
「何に使うんですか?」
「記録用~」
「記録用?」
「うむ。あ、瀧代は先に帰っていて良いぞ」
「え、あ、はい」
一は頷く。
「では、その、お疲れさまでした」
「おん」
またな、と文弘は一に手を振った。
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