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鬼
006
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黒須三丁目は、所謂住宅地である。
一戸建ての家が何軒もある。
文弘と一は、そこの十二にある家の前にいた。
一は家の大きさに驚き、少し固まる。
「裕福な家庭なんですかね」
「さあ、見た目だけかもよ」
「え? どういうことですか?」
「自分は他より劣っているわけがない、という気持ちは誰にでもあるだろ。その現れ、とかね」
「……?」
「まあ、行ってみようぞ」
文弘は『佐伯』という表札の隣にある呼び鈴を鳴らす。
「こんにちは~。警察の者です~」
嘘を吐く文弘に、一は「先生」と小声で突っ込みを入れる。
「またそんな嘘を……」
「簡単に言えばそうだから」
「全く……」
「うむ。しかし、反応がない。居留守か? それとも、死んだ?」
「いや、普通に留守なのでは?」
「だったら、かなり抜けている家だな」
「え?」
「ほれ」
文弘は窓を指す。
「開いている。それに、少し音が聞こえる」
「あ」
「ちゃんと見ようぜ」
文弘はそう言うと、家の敷地内に入る。
「お邪魔しますよ」
「不法侵入では?」
「バレなきゃセーフ」
文弘は玄関のドアを軽くノックする。
「佐伯さん? いますよね? 出てくださいな」
「取り立てみたい」
「佐伯さーん。開けますよ」
と、文弘は軽くドアノブを持ち、引くと扉は開いた。
「ドアの鍵は常にかけとけよ」
文弘は呟き、中に入る。
「瀧代、玄関で待ってても良いぞ。何があるか、わからんからな」
「いや、先生だけだと何をしでかすかわからないので」
「そうか」
文弘は頷き、階段を上がる。
「普通の家だな」
「面白くない、と?」
「いや、面白いよ。普通の家なのに、犯行予告を出すなんて」
「はあ……」
一は呆れたように言い、文弘を見る。
「あまり変なことしないでくださいね?」
「しないさ」
と文弘は言い、階段上がってすぐの部屋の前に立つ。
「ここが佐伯千歳少年の部屋かな」
「さあ」
「少し音が聞こえる。杜和泉小の校歌かな」
「俺、ここは地元じゃないんで知らないですけど……」
「俺も地元ではない」
ふむふむ、と頷いてから文弘は三回ノックをする。
「佐伯千歳くん?」
文弘が名前を呼ぶと、中から瑠璃紺の綺麗な髪で青白い肌の少年が現れた。
少年は少し怯えたような表情で「はい?」と文弘を見る。
「お兄さんたち、誰?」
「俺たちは警察。君、犯行予告を出したらしいね」
「!? 知らない! 何? はんこーよこくって」
「知らないってことはないだろ。うちに通報があってね。匿名だけど」
「知らない! 知らない、知らない! 出てって!」
千歳は扉を強く閉めた。
それから、一が何回か声をかけても、千歳は返事をしなかった。
一は困り果て、文弘を見る。
「先生、どうしますか?」
「ふむ。もしも、あれが演技だというなら彼は役者になるべきだな」
「はい?」
「もしかしたら、彼は何も知らないかもしれない、という話さ」
「え? それって、どういうことです?」
「さあね」
と、文弘は階段を下りる。
「俺は煙草を吸ってくる」
「先生、吸いすぎです」
「うるさい、未成年」
「ううっ」
「佐伯少年がいつ出てくるかわからんから。瀧代はそこにいろよ~」
文弘は軽く手を振って、玄関を出ようとすると。
丁度呼び鈴が鳴った。
出てみると、そこにはスーツをピシッと着た背の高い男がいた。
一戸建ての家が何軒もある。
文弘と一は、そこの十二にある家の前にいた。
一は家の大きさに驚き、少し固まる。
「裕福な家庭なんですかね」
「さあ、見た目だけかもよ」
「え? どういうことですか?」
「自分は他より劣っているわけがない、という気持ちは誰にでもあるだろ。その現れ、とかね」
「……?」
「まあ、行ってみようぞ」
文弘は『佐伯』という表札の隣にある呼び鈴を鳴らす。
「こんにちは~。警察の者です~」
嘘を吐く文弘に、一は「先生」と小声で突っ込みを入れる。
「またそんな嘘を……」
「簡単に言えばそうだから」
「全く……」
「うむ。しかし、反応がない。居留守か? それとも、死んだ?」
「いや、普通に留守なのでは?」
「だったら、かなり抜けている家だな」
「え?」
「ほれ」
文弘は窓を指す。
「開いている。それに、少し音が聞こえる」
「あ」
「ちゃんと見ようぜ」
文弘はそう言うと、家の敷地内に入る。
「お邪魔しますよ」
「不法侵入では?」
「バレなきゃセーフ」
文弘は玄関のドアを軽くノックする。
「佐伯さん? いますよね? 出てくださいな」
「取り立てみたい」
「佐伯さーん。開けますよ」
と、文弘は軽くドアノブを持ち、引くと扉は開いた。
「ドアの鍵は常にかけとけよ」
文弘は呟き、中に入る。
「瀧代、玄関で待ってても良いぞ。何があるか、わからんからな」
「いや、先生だけだと何をしでかすかわからないので」
「そうか」
文弘は頷き、階段を上がる。
「普通の家だな」
「面白くない、と?」
「いや、面白いよ。普通の家なのに、犯行予告を出すなんて」
「はあ……」
一は呆れたように言い、文弘を見る。
「あまり変なことしないでくださいね?」
「しないさ」
と文弘は言い、階段上がってすぐの部屋の前に立つ。
「ここが佐伯千歳少年の部屋かな」
「さあ」
「少し音が聞こえる。杜和泉小の校歌かな」
「俺、ここは地元じゃないんで知らないですけど……」
「俺も地元ではない」
ふむふむ、と頷いてから文弘は三回ノックをする。
「佐伯千歳くん?」
文弘が名前を呼ぶと、中から瑠璃紺の綺麗な髪で青白い肌の少年が現れた。
少年は少し怯えたような表情で「はい?」と文弘を見る。
「お兄さんたち、誰?」
「俺たちは警察。君、犯行予告を出したらしいね」
「!? 知らない! 何? はんこーよこくって」
「知らないってことはないだろ。うちに通報があってね。匿名だけど」
「知らない! 知らない、知らない! 出てって!」
千歳は扉を強く閉めた。
それから、一が何回か声をかけても、千歳は返事をしなかった。
一は困り果て、文弘を見る。
「先生、どうしますか?」
「ふむ。もしも、あれが演技だというなら彼は役者になるべきだな」
「はい?」
「もしかしたら、彼は何も知らないかもしれない、という話さ」
「え? それって、どういうことです?」
「さあね」
と、文弘は階段を下りる。
「俺は煙草を吸ってくる」
「先生、吸いすぎです」
「うるさい、未成年」
「ううっ」
「佐伯少年がいつ出てくるかわからんから。瀧代はそこにいろよ~」
文弘は軽く手を振って、玄関を出ようとすると。
丁度呼び鈴が鳴った。
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