狂気醜行

鬼

001

　杜和泉切り裂きジャック事件の翌朝。
　いつものように、大学でぼんやりと過ごす文弘。
　その隣では、一が真面目に勉強をしていた。
「瀧代、よく真面目に勉強できるな」
　小説のページをめくりながら、文弘は一に言う。
　一は「まあ」と言う。
「俺、マジで警察官になるんで」
「そう。あんま、良いもんじゃないと思うけどな」
　と、文弘が呟くと。
　文弘の携帯電話が鳴り、出ると理緒からだった。
　文弘は気だるげに「事件かい？」と訊くと、理緒は『そうです』と答える。
『久住辰雄が……殺されたんです……』
「あー、やっぱり？　そうなるとは思っていたよ」
『え？　あ、いや、でも変なのは久住の頭蓋骨が、何だか握り潰されている感じで……』
「うえええい!?　何じゃそりゃ！」
『先生。来てくれますか？』
「速攻行く。現場、そのままにしておけよ！」
『わかっています』
「よし！」
　文弘は電話を切り、素早く支度をする。
「行くぞ！」
「はい？」
　一は手を止め、文弘を見る。
「どこにですか」
「杜和泉署だ」
「へ？」
「良いから、早く！　これはとても楽しい事件の匂いがする！」
「は、はあ」
　一は呆れたような顔をして、文弘と共に杜和泉署に向かった。