狂気繚乱

狂気繚乱

¶013

　優の休みを聞いた高嶺は、息が詰まるような気がした。
　自分が変なことを言ったからだ。
　きっとそうだ。
　高嶺は、震えながら「ごめんなさい」と呟いた。
　それがたまたま、隣にいた一に聞こえた。
　一は、高嶺を抱きしめて「お前のせいじゃねえ」と言う。
「お前のせいなんかじゃ――ねえからさ」
「でもっ」
「大丈夫だよ。佐々塚は、そういうやつだろ？」
　他の教師のように、高嶺を理解しようとしなかったわけではない。
　優の名前通りの優しさに、一自身も好意を抱いていた。
　しかし、恋愛的ではなく。
　ただ、純粋に人として、である。
　一は、高嶺を優しく撫でながら笑った。
　二人がめでたく付き合い、恋人となったら嬉しい。
　しかし、嬉しいと思わない気持ちも一にはある。
　そばで、ずっと見てきた幼馴染みのこと。
　それに、人として好きな教師のこと。
　一は、少し自分の気持ちがわからなくなっていた。