狂気繚乱

春血暫

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狂気繚乱

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 佐々塚ささづかゆうは、公立高校の国語教師である。
 まだ二年目という新人で、教師からも生徒からもからかわれている。
 中でも、永逕ながみち高嶺たかねという女子生徒はしつこいほどに佐々塚をからかった。
 高嶺は、成績優秀だが生活面で問題児と言われている女子。
 校則を守らず、パンツが見えるくらいスカートを短くしていて、髪を巻いている。
 教師の間では、髪も染め、化粧もしているという。
 しかし、実際には地毛で茶髪であり、素っぴんで化粧をしているような綺麗な顔をしているだけである。だが、それをいくら高嶺が言っても教師たちは無視をし、髪を黒に戻し、化粧を落とすように指示する。
 その中で、優は高嶺を信じ、なんとか教師たちを説得させた。
 その姿に、高嶺はいつしか教師以上の気持ちを優にいだいてしまった。
 高嶺の優への態度は、好意によるものだということに気づいているのは、高嶺の親友である瀧代たきしろはじめのみである。
 一は、高嶺の幼馴染みの男子生徒だが、とある事情で女装をしている。
 制服だけが、借り物だがあとはすべて自前である。
 少し茶色で巻いてある長髪に、アイラインを引いたようなぱっちりとした目。
 女性らしい雰囲気。
 一目で彼を、男と思う者は、まずいないだろう。
「高嶺、お前ってやつは、男なんじゃねえの?」
 ため息混じりに、一は高嶺を見る。
 高嶺は、一の言葉に苛立ち舌打ちをする。
「は? 男の貴様には言われたくないわい」
「貴様というのは、昔は目上の者使っていたのだ。つまり、お前は私を上と思っているのだな。結構、結構」
「昔の話だろ?」
 けっ、と高嶺は言う。
「てか、佐々塚の野郎。いつ、教室入ってくるんだよ。遅いぞ、馬鹿野郎」
「確かに。三時間目は、もう五分過ぎているわ。普段なら、五分前に来ているのに」
「ボイコットか、この野郎。許さねえ、私が引っ張ってくるわ」
「あなた、そういうところ直しなさいよ」
 はあ、と一はため息を吐いて高嶺を見る。
「本気で嫌われるわよ」
「うるせえ、変態女装野郎」
「黙りよし」
 一は、高嶺の腹に一発軽く拳をいれた。

 と、そうこうしているとガラガラッと教室の扉が開く音がする。
「悪い、遅れた」
 と、優が申し訳なさそうに入る。
「この遅れた分は必ず何とかするから、今日はとりあえず進めよう」
「佐々塚、何で遅れたんだよー」
 いつものように、高嶺は佐々塚に言う。
「ハニートラップにでも、引っ掛かったか?」
「うるさいぞ、永逕。そんなんだから、お前は教師に嫌われるんだ」
「良いよ、お前が嫌いにならなきゃ」
「は?」
 高嶺からの告白のようなものを言われ、優は固まる。
「お前、何を言っているんだ?」
「え?」
 まさか、声に出ているとは思っていなかった高嶺は赤面し「うるせえ!」と言う。
「冗談だよ、バーカ! 女子高生に、コクられるとか本気で思ってんのかよ! 馬鹿教師!」
「あ、てめえ。それがお前の停学を取り消した教師に対する口か!?」
「ああん?」
 恥ずかしさから、いつも以上に優に突っ込んでいく高嶺を一は見ながら笑う。
「馬鹿は、お互い様よ」
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