最後の涙

水雲 寿々

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朝ごはん

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私は決めた。
もう泣かない。
家に帰れなくてもずっとここにいることになっても大丈夫。
私にとってはこの家が帰る場所。私の居場所だから。

──それに今は大事な人がいる。

卵が焼ける音を聞きながらジルが眠るソファに目をやる。
その寝顔は何処かあどけなくて、私よりずいぶん年上だと思っていたから不思議な感じだった。

大きなフライパンの上で卵をひっくり返す。うまく焼けた。
苦手だと思ってたけど、なかなかできるじゃない。

出来上がるまでに野菜を盛り付けて、簡単なドレッシングも手作りしてみた。

「……うん、それっぽくはなった。かな」

思っていたより多くなってしまった大皿と小皿をテーブルに移動させてジルを揺する。

「起きてー、ご飯だよ」

寝起きはいいらしく目が覚めるとすぐに立ち上がって食卓に移動する。
テーブルに並ぶ料理を見て目を輝かせている。

「これ、君が作ったのかい?」

「まぁ…一応ドレッシングとかも作ってみた。けど素人でもできるレシピだからね?そんな大したものでもないよ?」

なんだか照れくさくて手を振りながら答える。彼はそんな私をよそに、既に食べ始めていた。

「んーっ!おいひい!!」

まるで子供みたいに料理にがっついてはむせるジルは見ていて微笑ましい。
まだ目の周りは赤いけど、この様子ならもう大丈夫そうだな。

安心して私も卵を口に運ぶ。……なかなか美味しい。自分で言うのもなんだけど。

朝食をペロッと食べきったジルはそそくさと寝室に引っ込んでまた寝始めてしまった。

「そそっかしい人だなー」

ひとりで笑いながら食器を洗って片付けてから、薄暗い寝室で私も眠ることにした。
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