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39,毎回かわいそうなシナ

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「うっ……な、なんででしょうか……、か、体が重いというか、体がお疲れです……?」
 疲弊した体を返されたシナはクエスチョンマークを浮かべながら座った状態から芝生に寝転んだ。

「なんだよ、結局俺に全部説明させるのかよ……まあ、これに関しては俺もわかっているからいいか。えーっとお嬢様、これはあくまで俺の経験とかそういうのから判断した話になります。だから、少し彼女とは解釈が違うかもしれないけどまあそこは本人に聞いてください」

「わかった、続けてくれ」
 パッ、と戦斧から手を離すとドスン! と大きな音を立てて重力に逆らわず地面に落ちた。

「まず、この重さの物を振り回すために重要なことはなんだと思います?」

「ふむ、そうだな……腕力か?」

「それももちろん重要なのですが、それだけではあんなに振り回すことはできません。正攻法で振っていたら体がねじ切れます。そのため、あのクリスティーナのように最初に無理やり持ち上げて振り回し、そのあとはただひたすら回り始めた戦斧の重みを受け流すように動くこと……だと思います。俺はセンスが無いんでたぶんできないです。あと、体の軽さってのも一要素だと思います。要は、重さに逆らわずその重さをそのまま利用する……うーん、うまく説明すんのが難しい……お嬢様すいません」
 どう説明するか……とレブナートは頭をかく。

「……概ね言いたいことは理解できた。実践できるかどうかは置いておいてな」
 アリスはこの説明を聞き、ハンマー投げの原理と似たものだと解釈した。

「あっ! わかります! 水の入った重いバケツを持つとき、ふんぬー! と力を入れて投げるように持ってそのままの勢いで運ぶとなんとか運べるんですよ! その原理ですかね?」
 横になっていたシナが閃いた! と指を鳴らす。

「あー、だからバケツを何度か投げ飛ばしてたんだな……」
 レブナートは可愛そうなものを見るような目でシナを見る。

「というか、クリスティーナが実践してたんだし、シナにはわかっているんじゃないか?」
 レブナートがもっともな疑問を口に出す。

「あら、それは違うわよ」
 また一瞬で表情が変わる。

「わたしが主導で動くときには、戦いに関する知識をシナに入れないようにあえてブロックしているのよ」
 クリスティーナは、体を起こす。

「だから戦闘スキルや知識がシナの生活に影響を及ぼすことは無いのよ。いい意味でも、悪い意味でも、ね」
 少し伸びをして、あくびをする。

「何よその目は。自分勝手だと言いたいの?」
 ジロリと少し目を細めてレブナートを見る。

「いや……案外過保護なんだなぁって思っただけさ」

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