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36,専用機よりも万能機の方がウケがいい

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「これ、とある部屋に置いてあったの。ちょうどいいからこれで訓練しましょ」
 ガシャガシャと無造作に背中の武器をおろす。

「昨日戦ってみて思ったけど、剣の腕はまあまあね。でも、他の武器はどうなのかしら?」

「他の武器か? 槍や弓などの基礎は教えてもらったぞ」

「基礎? それってどこまでかしらレブナート」
 武器の確認をしながらレブナートに問う。

「どこまで……? そうだな、リーチが云々、それと強みと弱みの話くらいか?」
 アリスを一人前……いや、一人前を超え、一騎当千の将と同じ高みにまで導くには圧倒的に時間が足りないと判断したレブナートは剣以外の武器の知識を入れるのは最小限だけにしていた。

「ま、判断としては正しいんじゃない? でも、それじゃ戦場は生き残れないわよ。戦場でいちいちこの武器がどうとか思い出せると思っているの? 第一、どれだけ一対一の戦いが強くとも一対多数の戦闘経験が無ければいともたやすく踏み潰されるわよ」
 その言葉にレブナートは苦虫をかみつぶしたような顔になる。

「これに関しては俺の判断ミスかもしれない。たしかに、戦場想定が甘かった」
 レブナートは初めて人に教えるということもあり、自分の見通しの甘さを悔いた。

「……なんだ、そんなことか。前も言ったかもしれないが、私は戦場には慣れている。一対多数も何度か経験している。もちろん、遠距離兵装ありきではあるが」
 ARSであったとき、彼女は何度も厳しい戦局を乗り越えてきた。それこそ自分で学び、考え、数多の戦場を駆け巡ってきた。

「へぇ、よくわかんないけど自信はあるのね?」

「自信……? これは自信というのか? これまでの経験から判断された結論なのだが」

「そうよ、むしろなんだって言うのよ。……ま、それはまた後で確認すればいっか。それでね、わたしがこれらを持ってきたのは、剣以外を持った敵にも慣れてもらうためよ」

「剣以外に慣れるって……俺は剣しか使えねぇんだけど、誰が教えるんだよ」

「え? わたしだけど」
 クリスティーナは無造作に槍を持ち、軽く振って扱って見せた。

「わたしたちはどんな物でも武器として扱うことが出来るように訓練されているの。その過程で、色々な武器に慣れさせられたわ。ここにある武器程度なら全て使えるから教えてあげるわよ。教えると言っても、言葉でじゃないけどね」
 そう言い、武器を構えた。

「なるほど、確かに昨夜クリスティーナと戦ったときにナイフとの距離感を掴むのが難しかった」
 武器には当たり前ではあるが、リーチがある。リーチが短いナイフや拳、リーチの長い槍や長剣。もちろん、リーチが短いことが完全に弱点ではなく、その弱点を補うだけの長所がある。その武器のリーチのギリギリ、または範囲内の事を間合いと呼び、その間合いは何度もその武器を使ったことのある者や、逆に何度もその武器と対峙したことのある者にしかわからない。

「そーよ、もし相手の腕が同じくらいだったとしても、その武器との戦闘経験があるかないかだけで大きなアドバンテージになるのよ」

「なーるほどなぁ……。そーいや俺も色々な先輩達の色々な武器にボコられて強くなったっけ……」
 少し昔を懐かしむように目を細める。

「そうと決まれば善は急げ。やるぞ」
 アリスは木刀を構える。

「え、もうやるの? 休憩は?」

「いらん、時間が惜しい」
 早く来いと手招きする。

「……そう、なら行くけど、いいの? ここにある武器は全部本物だけど」

「構わない、当たらなければどうということは無い」

「ふーん、なら事故って死んじゃっても知らないからね!」
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