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21,戦場で駆けるための武器を作ろう
しおりを挟む「……お前がカールか?」
アリスは朝食を取った後、庭に出向いた。相変わらず丹念に手入れをされた薔薇の花壇が美しい。そして、白髪の、初老の執事に声をかけた。
「……おや、お嬢様」
声をかけられた老年執事……カールは庭の手入れをしている手を止め、アリスの方を振り向いた。
「たしかに。私がカールでございます。してお嬢様、何か御用で?」
綺麗な白髪をオールバックにまとめ、柔和な顔をしている。
「ああ、用があってきた。単刀直入に言うぞ、お前の鍛冶の腕を借りたい」
「私の……鍛冶の腕ですか?」
「そうだ、その腕が必要なんだ。前に厨房でお前の打った刃物を見た。とてもいい品だった」
「それはそれは。ありがたきお言葉です。ですが、どうして必要なのですか?」
「ふむ、もう知っているかもしれないが、私は戦場に送り込まれる」
「……存じ上げております。そして、お嬢様が覚悟を決めて戦場に行かれることも」
「それなら話が早い。私は戦場で、誰が打ったかわからぬ得物に命を預けるつもりはない。だからカール。お前に頼みたい」
真剣な表情でカールを見る。
「…………爺の剣に、盾に、命を預けるというという事ですかな?」
「ああ」
「理由をお聞かせ願えますかな?」
「……お前の作品には、何といえばいいのか、特別な何かがあったのだ。思い? 情念? 情熱? ……残念ながら、私には理解ができないモノなのだが、だが私でも理解ができるほどの何かがお前の作品には宿っている」
アリスは思った事を、たどたどしいながらも言葉にする。
「…………そこまで言われてしまっては仕方が無いですね。私めの技術でよろしければ、いくらでもお貸しいたしましょう」
ふぅ、と大きく息を吐き、アリスに首を垂れる。
「……助かる。断られたらどうするかと考えていたところだ」
アリスも少し安堵したように息を吐き出す。
「ふふふ、爺の腕をこんなに高く買っていただけるとは。嬉しい限りでございます」
「それだけの価値があるものだからな。それで、すぐに作業に取り掛かりたいのだが時間はあるか?」
「ええ、もちろんでございます。そして、何をおつくりになるのですかな?」
それでしたら爺の作業場へどうぞとカールがアリスを庭の奥へ案内する。
「ご厚意で建てていただきまして……。なんとかお返しができるよう色々なものをお作りしてはいますのですが……」
「たしかに凄いな。本格的だ」
中に入ると、今は火が入っていないのにどこからともなく熱気を感じる。
「今から窯に火を入れますので、二時間ほどしたら鍛冶を始められそうです」
「そうか。それなら作って欲しいものの共有をしておこう」
アリスは懐から、一枚のメモを取り出した。
「武器もそうだが、防具も重要だ。命を守るために必要なモノだ」
「ええ、その通りでございます」
「だが、私の力では思い盾を持ち続けることはできない。だからこそ、軽い盾が必要だ。軽くて、頑丈な盾が」
アリスは今、平均的な女性よりもかなり重いものを持つことはできるが、男と比べてしまうと、力不足だ。
「……鋼の比率でなんとか硬度は上げることができるとは思います」
「うむ、だがそれでは足りない。なので、この世界にはまだ存在しない『技術』を用いることにした」
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